オミズの花道
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『華を望む男』
2002年12月19日(木)


今日は休みである。
ゆえに日記ものんびり書ける。嬉しい。


さて火曜日の話。
地元ぱぱ(元有名人)御来店。真打登場って感じだ。
そう、火曜日はバクダン守様とダブルヘッダーなのであった。

・・・・きつかった(泣)。



お約束通りに極妻の着物を着る。
一部だけ残しておいた仕付け糸も取って貰う。


ぱぱってばもう・・・・でれでれのとろとろ。


自分の愛おしい女が自分の買ってあげた着物で、
いっぱしの店で(そうかねぇ。)頑張っている、
そんなシュチュエーションが彼にはもうたまんないらしい。


『なお〜!!なんちゅう綺麗さや!!愛してるで!!』
第一声がそれである。

ぱぱ、お髭が痛いよぅ。



それにしてもこのオッサン(これこれ)、相変わらずオーラが違う。

新規の客で彼の事を何も知らないのに黒服は瞬時に緊張し、
仕事が出来る女性陣はこっちのテーブルに目線を集中させる。
他の客はオッサンを見て何者か訝しげな顔をする。

顔を知ってる人もきっと何人か居るだろう。
昔は毎日この辺りをウロウロしていたからな。


二人連れで来てくれたから何人か女性をつける。
本当に付いて欲しかったマヤさんは自客がおられたので断念。

と、ここでぱぱがマヤさんを遠くで見て一言。
『あの女が一番のやり手やろ。売り上げは知らんけど。』

んもう。相変わらず鬼神のような観察眼。その通りでございやす。
何で解るんだろう。何も言ってないのに。



取り敢えず私にはVIP客なのでボトルはオゴリ。
2〜3本は覚悟の上だ。

あと、ゴルフをする時の帽子と、バジャックの携帯ストラップをプレゼント。
高い着物を買って戴いたんだからこれくらいは当たり前。
お返しの何分の一にもならんけれど。


こういうプレゼントは、周りに渡してる事が解るように渡す。

周りを見て判断しないといけない手段だが、クリスマスの時期なのと、
他の自客が居ないので今日はこの手が使える。


あくまでもさりげなく。
オスの習性を擽る。


それは渡されてる人間にも、周りのお客様にも擽りになる。

ピリピリとしたオスの世界の鬩ぎ合いを、
直感で知っている私が本領を発揮する瞬間である。

私の商売に計算が存在するならばこの瞬間にしか無い。



だけどぱぱ、本当にご機嫌。
さほど飲んでもいないのに(っていうか体が心配だから飲まさない)、
喋るし歌うし笑うし。

おまけに何度も何度も『綺麗や!最高や!』と叫んでいる。
もういいから。解ったから。恥ずかしいから。

とここで、携帯を取り出し電話。
どうやらご近所さんのお友達を呼ぶようだ。


これはぱぱが本当に機嫌のいい証拠。&私に花を持たせるスタイル。
人数が増えれば店側の私に対する評価が上がる。

これはさっき皆の前で自分に花を持たせてくれたから、
そのお返しを私にしてくれている行為なのである。


『んもう〜いいのに。高くなっちゃうよ。』
『今日のなおは見せびらかしときたいんや。綺麗や!最高や!』
・・・・ぱぱ、本当にやめて。叫ばないで。うるさい。しつこい。くどい。

それで携帯を代わり、近くまでそのお客様を出迎えに行く。
二名様追加でホクホク。
呼ばれた方は気の毒。

『コイツと初めて会ったんがチャイナドレス着てた時やったんや。
 そりゃもう綺麗やってなあ〜でも今の方がもっと綺麗やねん!』

そんな訳の解らない自慢を聞かされちゃうんだから。
そりゃ綺麗に見える(だけ)だろうよ。ぱぱの買ってくれた着物なんだし。
あ、なんだ?着物の自慢したかっただけかよ?(濃厚)むかむか〜。


ゼニの匂いに目ざとい女性達は上客の匂いを嗅ぎ付け、
ビールだの何だのを頼む。まあそこそこはいいんだけれど、
余り脱線しそうになったらストップをかけるのはメインの私の仕事。

それはゼニの分野だけでなく、会話や立ち居振る舞いでもそう。
やんわりと促し、不自然でなく甘えを捨てて戴く事にしている。



こうやって自分のお客様を守れないうちは、自分の、と呼んではならない。
守る為にはオーナーであろうが黒服であろうが女性達であろうが、
ちゃんと交渉して筋を通すのが当たり前である。

時には気まずくなったりもする。それが嫌で逃げたくなる時もある。

皆そんなに強くは無く、揉め事が嫌いなのは誰も一緒だ。
それは私だって一緒。いや、どんなに強い人間でも一緒だろうと思う。
だけど酒絡みであろうが仕事なのだから、当たり前なことだと思う。


何度も言うようにお客様の方が何倍も私より賢いのだ。
(でなければ独立して身を興すなど出来るわけは無い。
 雇用されていたとしても飲める甲斐性があるのだからね。
 働くホステスよかは賢いんじゃないかと。)

その諍いが嫌で、私が逃げたり、狡さで見ない振りをすれば、
上客であればあるほど敏感に悟り、自分の手元から離れていく。

そして残るのは色絡みの客だけ。
私はそんな「どんな女でも出来る商売」はしたくない。


確かに自分は雇われている身分だが、
お客様に給料を出して戴いているのであって、
店やママや黒服や女性達に給料を貰っている訳ではない。


このぱぱとはそういう思いを沢山した。
それをぱぱも解っているからこそ、
私を自分のあらん限りの力で守ってくれる・・・・。


最初は『ラブラブ光線色絡みストレート豪速球魔人』だった彼も、
(いや本当に大変だったんだから。)私の筋を読み取り、見守り、認めた。
ただの飲み屋のねえちゃん、を、かけがえのない存在、と見てくれるようになった。


『色はどこでも買える。せやけどお前の代わりはどこにもおらん。
 同じ金ならお前の店で落とすほうが気分がええ。何十万払っても惜しゅうない。』

そういって今回も高いゼニを出すぱぱ。



ぱぱ、本当にありがとうね。



お金よりもその言葉が、何よりもの報酬。
今日のテーブルで咲いた、私の華・・・・。


本当の上客様とは何もゼニを落とすだけではなく、こういった阿吽の呼吸を心得たお客様が本当の意味で上客なのだ。
むしろゼニは余り関係無いと言えるだろう。

だってこんな関係は、築こうと思ってもそうそう築けるものではないからだ。
ゼニで買える筈も無く。誰とでも可能な訳も無く。


『ぱぱ、今日は・・・・じゃなくていつも本当にありがとう。』
帰りのタクシーの中で私は甘えながら言う。

『解っとるで。可愛いのう〜、お前は。』
・・・・ぱぱ、お髭が(さっきよりも)痛いよぅ。



・・・・ぱぱ、
ぱぱは私の自慢のお客様だよ。
知ってるだろうけれど。

でもね、何回言っても足りないの。
ありがとう、と、大好き、と。




今度は私の番だからね。


本当は良く解ってるの。
私はきっと、まだまだ穴だらけでいたらない人間です。
なのに、ぱぱは私に華を持たせてくれる。

それはきっと、私にまだまだ伸びて欲しいからなんだよね。
だからまだまだ頑張るよ。行き着く所まで行き着いてみせます。

だから見ててね。



いつかきっと、
ぱぱが本当に自慢出来る最高の華になるから。





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