ひとりびっち・R...びーち

 

 

10万馬力 - 2001年09月06日(木)

 自分の予定というものが一切ない生活で、曜日を確認する手段として母のお出かけがある。
 何かが憑依しているとしか思えないスケジュールで、毎日どこかに何かを習いに行く。

 その日は雨の火曜日、朗読の会がある日だった。
 中途半端な距離の、駐車場のない公民館まで、私はお抱え運転手として迎えに行った。

 母を乗せて走り出すと、少し先の急な坂道を、急ぎ足で登っていく女性の後姿が見えた。

 「ほらほら、あれが先生よ」
 
 「へぇ〜」

 「ほら、何て言ったっけ、ペタペタっていう・・・
  そうそう、ミュールよ、ミュール
  こ〜んなに(運転中だから見られないって)
  ヒールの高いの履いて、颯爽としてるのよねぇ」

 「ふぅ〜ん」

 「私とトシは変わらないのよぉ、あんなサンダルでよく歩けるわ〜」

 「だって、10万馬力だもん」

 「へ?」

 「だって、ほら、アトムでしょ?」

 朗読の会の先生は、鉄腕アトムの声優さん、清水マリさんなのだ。
 
 アトムで育った世代としては、ミュールどころか、空を飛んでいないことが不思議、というのが偽らざる心境である。
 
 
 


 

 

 


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