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紐解かれる記憶。 - 2001年12月05日(水) いつまでも終わらない仕事を 旅行鞄に突っ込んで 19:53分発ののぞみに飛び乗る。 初めて、東京から岡山まで。岡山まで。 ちくりと胸が痛む。 車内アナウンスが 途中駅の到着時刻を告げる。 名古屋 21:33・・・ 京都 22:12・・・ 新大阪 22:26・・・。 ああ、そうか。こののぞみは・・・。 21時までの勤務、 先輩たちは優しくて、 『今日は、海を渡るんでしょう? 後はやっておくから早く行きなさい』 そういって、いつも送り出してくれた。 東山線から9番出口を駆け上がって、 名古屋駅構内を ちょうど反対側の新幹線口まで 大きな荷物を抱えて良く走った。 それでも、嬉しかったんだ。あのとき。 窓の外、流れるビルでは 四角く切り取られた光の中で まだ仕事をしてるひとたちの背中が見える。 広いフロアにひとり・・・ふたり。 岡山までの2時間、 ずっとうきうきしていたんだ。 着いたら、なんて言おうって。 今日は、階段の前にいてくれるかな。 それとも、車の中で待ってるかな。 間に合わなくて、ちょうど走ってくるところかも。 ぎゅうって抱きついたら なんて言うかなあ・・・。 誰かと話したい。 なんでもいいから、話したい。 携帯を取り出して 片っ端からメールを打つ。 どうしてなんだろう、こんな時に限って 誰からも返事が来ない。 高松駅からフェリー乗り場の前を抜けて オレンジ色の街灯に照らされて走る。 必ず電車に酔う私に、 「お疲れさま。なにか食べられる?」 私は、背もたれを倒して ひどく酔っていればそのまま帰るし 気分が良ければどこかで何か食べたいという。 深夜の高松は車が少なくて なんだかどこまででも走れるみたいな気がする。 車掌さんが検札に来る。 窓枠においておいた切符を片付けて 代りにMDを取り出す。 音楽を聴こう。最近の曲を。 ふたりで聴いていない曲を。 悲しい。 淋しくはない。 ただ、悲しくて涙が出てくる。 ふたりで聴いていない曲なんて、ない。 隣のおじさんに気取られないように 窓の方を向いて泣く。声も出ない。 涙の通り道が、熱くて、ひりひりする。 ・・・眠ってしまおう。 もうすぐ、岡山に着く。 岡山駅の外へ出てしまえば、 ホテルに入ってしまえば、 亡霊のような記憶から逃げ出せるはず。 イヤホンを取った耳に飛び込む乗り換えのアナウンス。 瀬戸大橋線、マリンライナー69号、0:04・・・。 窓に映る船の灯り。 走りすぎる途中の小さな駅。 坂出からの20分が、いつも長くて。 ・・・長くて。 線路の突き当たりでは あのひとが、笑っていたのに。 わたしが、笑っていたのに。 ...
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