縁側日記  林帯刀





2004年07月26日(月)  シーン。


部屋の中ではほとんど一日扇風機がまわって、
夕方にはひぐらしの声が聞こえてくる。
いつの間にか夏が来ていることに気がついて、
少しでも自分が変わったのかどうか、
ずっと考えている。
思考のスピードがすごく遅くなった気がして、
もどかしく思うけれども、
どうしたらいいのか分からないから、
のんびりしたシナプスで考えをめぐらす。
窓から入ってくる風は涼しい。
扇風機のスイッチを切ってみる。


近づくもの。
近づけないひと。
変わらない距離にあるいくつかのこと。


私にはまだ怖いことがたくさんあって、
手をのばしたまま戸惑っている。
どうして怖いのか分からずにいる。
何が怖くて何が怖くないのか。
その境界線は誰でも複雑なのだろうか。
のばした手が脈打っている。
一緒になって視界がゆれている。
他人のようにそれを見ながら、
頭の片隅で涙を流す。
どうして私は怖がっているんだろう。


クーラーの風は冷たすぎることがあって、
風の当る腕や足の皮膚がちくちくする。
タイマーをかけて寝てみても、
たいていは機械の止まる音を聞いてしまう。
そうやって日付が変わって、
いつの間にか朝がきている。
眠りに落ちる瞬間の記憶はないままに。


声を思い出してさみしくなること。
臆病になっていること。
体全体がときどき脈打つのが少し怖いこと。
言えずに舌の上でころがした言葉と、
言うのをやめてしまった言葉。
書こうとしても動かない指。


あと何回の夕立と台風で、
夏がすぎて秋になっていくのだろう。
私はそれを今と変わらず見ているのだろうか。


涙もろくなっている体、
動けないこと。
変わっていくことをやめてしまうのは簡単だとしても。


<< >>




My追加
[HOME] [MAIL]