縁側日記 林帯刀 |
2004年08月01日(日) マージン。 | ||||
水に映った満月。 波にふれることはできても、 満ち干を作り出すものに手は届かない。 縮まらない距離を見上げている。 原因と結果の間の時間のことを考える。 時計の針は何周したのだろう。 知らないうちに私は変わっている。 変えられている。 私によって。 それは矛盾ではないか。 ガラスコップの水で薬をのむ。 体はだまって吸収する。 月と海は満ち干をくり返す。 女は胎児の存在に気付けない。 … 口に出すことを恐れてはいけないと、 言い聞かせながら黙っている。 口を閉じている。 のど元から苦味が広がる。 胸の奥のかたまりが体温を下げる。 決めてしまえば視界さえ明るくなる。 恐れていてはよろこびもない。 けれど私は黙っている。 暗さから逃げて目を閉じている。 そうして眠り、 目が覚めて口を開けてももう出てこない。 言おうとしていない自分を確認して、 安心し、同時に空しくなる。 私はまた勝てなかった。 |
<< | □ | >> | ||||
[HOME] [MAIL] | ||||||
![]() |