縁側日記  林帯刀





2005年07月06日(水)  血。


祖母がベッドに寝ている。
話しかけた言葉に答えずに目をあげている。
色素のうすくなった目。
点滴。
酸素の管。
隣のベッドからおおきなひとり言が聞こえる。

祖母の目は私を見ていない。
私に流れる血を見ている。
他の血と混ざった自分の血を見ている。
血の奥にある、過去を見ている。

唇が少しわなないた。
声は聞こえない。
看護士が血圧を測りにやってきた。
私は立ったままだった。
聞くべき耳は何十センチも離れていた。

祖母に似た部分を私は答えられない。




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