日々日記
いちらんふるいあたらしい


2004年05月29日(土) 蛇の抜け殻

するするっと、まるで紐に意志があるかのように、細くて長い蛇が優雅に、
そしてあっという間に視界から消えた。


そのあとに残されていたのは、草の上でうねるように脱ぎ捨てられた、
脱ぎたての蛇の抜け殻。
手に取ると、雨に濡れた脱ぎたてストッキングのようなしっとり感があった。

乾いたのや、朽ちたものは触ったことがあったけど、このやわらかさには
とても衝撃を受けた。
抜け殻自体は生き物ではないけれど、
残っていた生々しい感触は、「死」よりも「生」を思いおこさせた。

くんくん。匂いはない。

抜け殻は、中表に脱いである。
脱ぎ始めは負荷がかかるのか、頭のあたりがムギューと縮まっていた。
指でそっとつまんで引っ張ると、シワがとれて頭のかたちが現れた。
しっぽの先まで、きれいに脱いである。
完璧な状態。

口元を見ると、小さな鼻の穴が。

背中側は薄く色がついている。紫外線対策かしら。
表面には小さな鱗状の隆起がびっしり。
生きている蛇の背中はさぞすべらかなことだろうと想像する。

目の場所だけはまん丸いドーム型で、そこだけとびっきりの透明なのだ。
まるで美しいレンズのよう。

腹側は透明で、湿っている間は少し虹いろがかっていた。
うおぅ、リアル蛇腹。まさに蛇腹。

観察しているうちに、暖かい風に吹かれて抜け殻はみるみる乾いていった。


せっかくなので乾かぬうちに友達に見せてあげようと思って持って行ったら、
「イヤー!ヒィィ!!…しっとりしてるよ!イヤァ!
でも自然の神秘ね!凄いわ…」と大喜び(?)だった。
小6の娘より彼女の方が大興奮だった。

ここんちのご主人は、今夜帰宅したら妻から蛇の抜け殻を見せられるのだよ。
(ああ、なんかちょっと笑える)


inu-chan