にわか雨の心配もなくすっかり夏の空であった。
陽射しがきつく感じたが気温は33℃に留まり猛暑を免れる。
北海道の網走では38℃を超えていたそうで驚く。
極寒の土地だけに猛暑は厳しく自然の何と容赦ないことか。
これも異常気象なのだろう。まるで地球が壊れてしまいそうだ。
朝の峠道を上り詰めた所で道路の補修工事が始まっている。
ほんの僅かな区間だが片側一方通行となっていた。
対向車は毎朝見かける車ばかりで通勤途中であるらしい。
私のように山里に向かう者もあれば市内に向かう者もある。
山道は涼しくしかも近道なので利用者も多い。
頭が下がるのは二人の警備員さんだった。
赤い旗と白い旗を持ち交通整理をしている。
それも一日中のこと。いくら山道でも炎天下には違いない。
警備員さんはトイレにも行けないのだと聞いたことがある。
じゃあどうしているかと云うと「おむつ」をしているのだそうだ。
そんなことがあるものかと耳を疑ったが本当のことらしい。
けれども真夏は熱中症の危険があり工事にも休憩が伴う。
その間にトイレをしたり水分補給をしているのだろう。
それにしても大変な仕事である。私は毎朝会釈を欠かさない。

仕事は今日も目まぐるしい程の忙しさだった。
車検整備が後を絶たず同僚も一生懸命である。
おまけにオーバーヒートをしたお客さんも来てくれた。
エアコンも効かなくなっており厄介な修理となりそうである。
代車は不要とのことでお宅まで送り届けたのだが
そのお客さんは私が若い頃に憧れていたY君だったのである。
緊張で胸がパクパクする。車中の会話もしどろもどろであった。
Y君に腕の染みを見られたかもしれない。頭の白髪もである。
Y君も白髪頭であったがきりりっとした顔立ちは昔と変わらない。
歳月は時に残酷でもあるがそんな歳月を埋める手立てはないのだった。
恋に恋をしていた頃が遠ざかる。私もY君も何と若かったことだろう。
現実は厳しく今日も資金繰りに頭を悩ます。
じわじわと月末が近づいているがもうどうしようもなかった。
諦めるのではなく「腹を括る」しかないのだと思う。
「腹を切る」のではないので命に別状はないだろう。
難破船が島を目指している。とにかく櫓を漕ぎ続けなければいけない。
※以下今朝の詩(昭和シリーズより)
昭和その4
「よんばんよんばん」 女の人の声が聴こえて 「もしもし」と電話に出る
真っ黒い電話機であった ダイヤルはなく 黒い螺子のようなものを ぐるぐると回すと 交換手の女の人が出て 相手の番号を呼んでくれるのだ
一番は確か村役場であったが 子供が電話をすることはない
父の仕事用の電話である 子供心に父は偉いのだなと思った
友達の家には電話はない それが当たり前だった時代
遊びに行く時は自転車で走った 約束も何も出来なかったのだ
「よんばんよんばん」 今は誰の声も聴こえない 父も母も何処にいるのだろう
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