2004年08月28日(土) |
不定期連載:「イシドロよ、大志を抱け!8」ガッツの兄ちゃん重症一ヶ月 |
ガッツの兄ちゃんが狂戦士の甲冑のせいで大怪我して、俺らはずっと森の中に足止めをくらってた。シールケとパックと女の妖精が力入れて看病してるけど、俺はあんなに苦しむガッツの姿見たことないぜ。ボロボロになっちまってよ‥。 セルピコの野郎は何か黙々と裁縫をしていた。三度三度の飯つくって、洗濯して、裁縫までやって。奴もよくやってるよな。 よう、セルピコ、ガッツの兄ちゃんの服完成しそうか?薪も拾ってきたし、食料も調達してきてたんで、とりあえず暇になった俺はセルピコの横に座った。
「‥‥形にはしましたが、まだ完成までは。ガッツさんは大きいですからね」
ガッツの兄ちゃん、治るまでどのくらいかかると思うよ?
「シールケさんが付きっきりで看病しています。ようやく傷もふさがって、話もできるようになりました。後はガッツさんの体力を信じるしかありませんね‥」
開いてるんだかどうだかわかんねえ細い目で、セルピコは淡々と裁縫しながら言った。目え、疲れねえ? お前、母ちゃんみたいだな。
「‥‥イシドロさんのお母様は、よいお母様だった様ですね‥」
え?何、この反応‥。なんか重いぞ?? そうだ、ここんとこ家事ばっかだったから、気晴らししようぜ。お前俺の剣の稽古付き合ってくれねえか?もちろん風アイテム無しでだぜ。
「‥‥私なんかでいいんですか?」
別にかまわねえよ。お貴族様の坊ちゃん剣ぐれえよ。
「‥‥時々はいいでしょうね。私も使ってないと腕が鈍りますし‥」
そう言ってセルピコは細めの棒きれを探しはじめた。棒きれなんかじゃ意味ねえって!
「‥真剣で相手しろって言うんですか?」
当たり前よ!俺もちっとは修羅場くぐり抜けてきたんだ。そのくらい、なんとか‥。 セルピコは無言で剣を抜いた。レイピアでいいんですね?ってなんだその目つきはよっ!?殺す気か?俺を殺る気か?(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
「目つき悪いのは生まれつきです。放っておいてください。ではア・プレザンスで、どちらからいきますか?」
どっちでもいいぜ、ってア・プレザンスって何だよ?
「相手の身体に、一カ所傷をつけたら勝ちという決闘のルールです」
生ぬるいんじゃねえの?
「では、ア・ルートランスですか?」
なんだよ、それも?
「どちらかが死ぬまで戦う真剣勝負です」
‥プレザンスとやらでいいぜ‥。じゃ、俺からいくぜっ!‥え!?
「一本、とりました」
今、何が起こったのか、わからなかった。セルピコが動いた様な気がしたら、次の瞬間奴の細い剣が俺の喉元にあった。 な、なんだ今のは!?もう一回、手合わせしてくれよ!
「いいですよ、はい、一本とりました」
もう一回、手合わせしてくれよ!
「はい、一本とりました」
も、もう一回!
「はい、一本とりました」
セルピコ、てめえ畜生、本気出してやがるな!(怒)。
「本気なんか出してません。本気でやってたら、今頃イシドロさんの首と胴体は生き別れです」
この野郎、めんどくさそうな顔して怖ろしい事をさらっと言いやがる!もう、一回!
「一本、とりました」
もう一回!
「一本、とりました」
もっかいやらせろ!
「一本、とりました」
もっかい!
「一本、とりました」
‥‥‥以下略。
う、ぐぐぐ、セルピコの人でなしーっ!!!ガッツの兄ちゃんは手加減してくれたぞ!(泣)。
「人でなし度には自信があります。それに敵が手加減してくれますか?」
うわーっ! かっこわりいと思ったけど、悔しくて涙が出たんで俺は森の中へ走っていった‥‥。 結局、俺は100回やって、100回セルピコにとられた。 ぐす、早くガッツの兄ちゃんよくなってくれねえかな‥‥。
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