「・・・はい・・今から帰ります・・・」
電話を切ったとたん、 まるでスイッチが入ったみたいに さっきまでの彼女はもう、そこにはいなくなった。 周りのものさえも、もう何も見えていない。
(・・・電話の向こうは、怒っていたのか?不機嫌だったのか?) 今までの時間さえ後悔しているように、 ただ足早に、家路へと急ぐ
例えば、見方を変えれば、 けっこうイケてるこの街の夜の姿も。 誰かにソックリな行き交う人の疲れた顔も。 そして隣にいる置いてけぼりのバカも。
何も見えていない。何も映らない。
まるで、 すべての外界から遮断された場所に 行ってしまったみたいに。
毎晩必ずこの時間に 彼女はスイッチを入れるんだろうな 健気に、ただ健気に。
でもそれは、 毎朝仕事場へ出て押す タイムカードのようにも見えた。 “義務”のような、ただの“仕事”のような奉仕・・・
見ていて、 あまり、いいもんじゃないな。 少し、痛くて、 そして、とてもツライな。 とてもツライな。
〇 RIGHT NOW / VAN HALAN
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