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「日本画から日本画へ」@現代美術館
2006年02月14日(火)

「日本画から日本画へ」という展覧会が見たくて、人気がないことで有名な?都の現代美術館へ行った。入場者数が10年で360万人だという。こう聞くとそんなもんかと思うが、昨年、東博でやった「北斎展」は40日で33万人。

場所の問題やPRの問題、収蔵品の性格など勘案すべきことはあるが、考えさせられる数字である。PFIだかで事業委託をされている都の歴史文化財団だかは大変だろうな、と変な同情をしてしまう。この頃、私の周りに、このPFIで指定管理者になって苦慮している人や、はずされて困った人、はたまた自治体からそれを押し付けられまいと画策している財団の人などいろいろいて、話を聞くものだから、ついこんなことを考えてしまう。

で、今日の展覧会も私が行った午後の時間、同じ展示室に人が2人か3人いるかなあ、っていうくらい、のんびりと見ることが出来て、その点では誠に気持ちのよい展覧会であった。

私は明治以前の日本画も好きだが、近代の日本画はもっと面白いと思う。日本画という手法を選択する時点で、何らかの自覚を強いられ、それが作品に反映するから好きだ。下手な油絵よりよほど問題意識に富む。

今日見たものでよかったのは、松井冬子の応挙風な凄みと、町田久美のあっけらかんとした作品。ともに主題への切り込みが冴えている。松井のはともかく、町田のを「これが日本画だ」と出されると当惑するだろう。そもそも日本画という括りが、近現代ではあまり意味をなさなくなっている。便宜上、しばしば用いられる便利な語ではあるが。

都合7人の日本画となんらかのかかわりのある若い画家たちの絵を見た。中にはこの主題でいつまで書けるのかしらんと首を傾げたくなるものもあった。デッサン力のない絵も見ていて窮屈だから技術は必要だけれど、最後は表現者のその時点での世界観・人間観かと思う。展覧会というと、ついつい出来上がった大家の作品にばかり走りがちだが、若い画家がこれからどうなるのか、時々気にしてギャラリーや美術館にいくのも面白そうだ。

入場料分は十分楽しめた展示だった。でも「日本画から日本画へ」というタイトルとうまく呼応していたかというと、それはなんともいえない。個々の作品の出来とは関係なく、主催者側の責任によるキャッチ倒れの気味がないとはいえないかもね。



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