書泉シランデの日記

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『江戸の動物画』
2006年02月27日(月)

副題に近世美術と文化の考古学、とある。表紙にはとびきり可愛いウサギさんが書かれている。これを買わずにいられようか―\6000なら10日は楽しめるだろう、と思って買った。いや、楽しめるというより、しっかり勉強できるだろう、というほうが近いし、一応は研究書のようだったから、挫折したらもったいないなー、という心配も。

あにはからんや、幸か不幸か2日で終わった。著者の今橋理子さんはとても筆の立つ人である。読みやすい。話の運びが面白い。図版が沢山あるし、あっという間にページが進んだ。

江戸時代に書かれたウサギ、虫、猪、仔犬といった動物が書かれている絵を読み解く研究である。それらを画題としたすべての絵を読み解くキーを提示するのではなく、対象となるのは若冲や蘆雪などの特定の作品である。

ここまで完璧に読み解けるものか、お見事!と賛辞を呈したいと同時に、ほんとかね?暴走してやしないかい?という疑念も同時に呈したい。疑念の妥当性を証明できるほどの材料は私は持たない。無責任な素人の疑念である。あまりにもコテコテの読み解きに食傷することと、仮説の上の推測、推測の上の断定みたいな論調がなきにしもあらず、だからだ。

しかし、大層面白い、知的刺激に満ちた本であった。ミステリーを読むような感じで読める。こういう本はもっと広く読まれるといいな、と思う。

ただし、残念なことに、これを読んで、絵そのものへの衝動はあまり湧いてこなかった。どうしてだろう?今橋説と共に作品に当たって感動を同じうしたい、という気持ちにならなかったのだ。絵解きをすればするほど、絵そのものの魅力が遠くに行くような感さえ覚えるのだけれど・・・凡下の婦のたわごと。



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