気持ちメモ
DiaryINDEX|past|will
別れを切り出した後の相棒の反応は至って冷静と言うか冷たかった。
私が突然こっちにくると言い出したときに、そういう予感はあったそうで 覚悟を決めていたんだそうな。 相棒は仕事も大忙しでイライラしていたのもあるだろうけど、 見事なくらいに突き放された感じがした。 でもそれが、勢いで言ってしまった部分があったにせよ、 「私の決断は間違っていない」って思えた。
もう最後ということもあって不満をぶつけあって、そのまま無言になって いつの間にか眠ってしまっていた。
朝になって、私が帰り支度を淡々と進める様子を見て、相棒はどう思ったんだろう。 私の様子があまりにもすっきりさっぱりしてる風に感じたらしい。
昨晩はあれほど冷たいことを言っておきながら、あーでもないこーでもないと言っていた。 そんな相棒の様子を見ながら、ふん、昨日の態度の翌日にはそうなるかい!ってな感じで 相棒の未練たらたらな様子とは対照的に、私はあっさりした態度でいた。 いや、態度でいたというよりは、そういう態度をとったと言う方が正しいな。 これでよかったんだと思いながらも、これよかったの?と思う自分もいて。 だからといって、昨日「終わりましょう」と言い出したのは私だし、 それを思うと変なプライドが、そういう風にさせたんだ。
「見送りはいらないから、じゃあね」と友達と別れるかのように私は部屋を後にした。 外を歩いている時に、振り返りたい気もしたし、相棒が追いかけてくるかも?と期待した。 もしも振り返った時に、相棒が窓から私を見ていたとしたら、 今朝の強がっていた態度にヒビが入りそうで、振り返らなかった。 そして、しばらく歩いてから振り返ったけど、相棒の姿は無かった。
相棒の家をあとにしたはいいものの、実は駅までの道がよくわからなかった。 駅まで5分程度の距離ということを考えて、余裕を持って家を出たはずが 遠回りをしてしまったらしく、駅に着いた頃には電車ギリギリの時間だった。 切符を慌てて買って改札を抜けて、ホームでぼんやりしてた。
気がつくと、隣に相棒がいた。
「来ないでって言われたのに、来ちゃってゴメンね」と相棒が言った。
私は何と言っていいかわからなくて、その言葉を無視して電車に乗った。 相棒は私を見失わない程度に離れて、一緒に電車に乗り込んできた。 その後、結局は私の傍に来て、そのまま乗り継ぎの駅まで一緒に来た。
私は、今まで相棒に洋服をプレゼントしたことが何回かあって、 そして、今回ここにくるときにも、秋冬用にと何枚かの洋服を買ってきていた。 昨晩、相棒は「今までくれた服は全部持って帰って。思い出が残るのはイヤだから」と言い、 今、私が持っているバッグには、相棒へあげたはずの服がたくさん入っていて おかげで、バッグはとてつもない重さになっていた。
昨晩「どうせ別れを言うつもりで来たんだろ?」と相棒に言われた時に そのつもりなら服なんて買ってこないよと私は言った。 そう、別れるって口に出してしまうかもしれないと自分でも思ってたけど だからって本当にそうなるとは思ってなかったんだ。 自分で言い出したとはいえ、なんでこんなことになったんだろう?とも思った。 昨晩から今朝にかけては、さっぱりした態度でありながらも、 それと同時にかなり冷たい態度をとっていた私だけど、 これが一緒に過ごす最後の時間なんだなぁと思ったら なんとなく冷たくするのも気が引けて、なんとなく温かい気持ちになった。
空港に向かう電車を待ってる間、相棒は今朝はごめんねと繰り返した。
振り返って相棒がいなかった時の、寂しいような気持ちを考えると、 ここで強がったり意地を張ったりしなければよかったんだろうけど。 ここまで来ても私は意地を張らずにいられなかった。
とにかく、この電車に乗ったらもう会うことは無いんだろうなと思うと 気持ちよく「じゃあね」と言うべきだと思った。 「じゃ、最後に一言どうぞ」と相棒に言ったら、相棒は「やり直したい」と一言言った。 私はこの言葉を待っていたのかもしれない。 でも、この場に及んでも意地を張る私がいて「じゃ、そうしよう」と言えなかった。 私は「今までありがとう」と言い、相棒は「着いたら連絡して」と言った。 そして、私は電車に乗った。
|