てくてくミーハー道場
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2008年06月30日(月) |
NODA・MAP番外公演『THE BEE』日本バージョン(シアタートラム) |
野田はやっぱすごいや。
観終わって最初に出てきた感想がこれだった。
1時間10分という、エンゲキにしても映画にしても短い時間の作品であるし(原作が筒井康隆センセイの『毟りあい』という短編)、ストーリーも、わずか数日間(一週間ぐらい?)の話なのだが、なんとそこには“人類の歴史”の長大な流れさえも感じられる。
原作があるので、ストーリーをナイショにしても意味はないかもしれないが、とりあえず、書かないことにします(けっして! メンドクサイからではない!←念を押すだにアヤシイ)
んー、実際、原作から受ける印象とはまた全然違うと思うぞ。筒井センセイの原作小説は、筒井センセイらしい「現実社会へのイライラ」みたいなものがどんどんどんどんエスカレートしていく一種のドタバタ不条理劇なのだが、今回「演劇化」されたこの作品には、いい知れぬ悲しみ(諦め、とも言えるかもしれない)が大いに含まれているようにぼくは感じた。
芝居自体はそれこそドタバタしてるし音響的にもうるさいし。
ネタバレを一個書いちゃうと、尾藤イサオが唄う(最初ぼくはIZAMが唄ってんのかと思った/笑)某有名クラシック曲に日本語の歌詞を付けた曲が、すごく深刻なシーンにわざとらしく流れる。この曲がまたいい感じに軽薄きわまりない(笑)。その軽薄さが逆にすばらしく観客の焦燥感を煽るのだ
それなのに、とにかく哀しくなってくるのだ。(でも、最近いやんなるほど溢れてる「泣ける!」芝居では決してないのでご安心を)
哀しく、としか書けないぼくの語彙力のなさで誤解を与えてしまうかもしれない。ごめんなさい。
なんていうか・・・うんざりしてくる?←絶賛してるのです!そうは見えないけど
うーんと・・・「はぁ〜」と心底ため息をつきたくなるというか。←ておどる、表現に苦しんでおります
よく、観終わった後に「人間っていいなぁ」と優しい心になれる芝居がありますよね。
もちろんそういうのもぼくは好きです。
帝国劇場とか新橋演舞場とかで観る場合は(笑)
でも今回の芝居は、
「人間って、なんて愚かなんだろう」「人間って、なんてダメダメなんだろう」
と、心底情けなくなってくるのです。
そこが、いい。
こんなわけのわからん感想を読んで興味を持った人は少ないと思うが、万が一興味を持った人は是非観に行ってください。絶対損はしないので。←これには自信あり
7月9日まで日本バージョンで、12日から29日までロンドンバージョンで上演されています。
日本版の出演者たちは、揃いも揃って熟練(近藤良平が「セリフを言う芝居ってもの」に出るのが初めてと知ってびっくり)の強者たち。どこにもほころびがないキャスティング。
ロンドン版の役者たちもすごい人たちらしいので(それに、ちゃんと字幕ありだし/笑)、どちらを観ても大丈夫だと思う。
まるで野田地図の広報みたいなことになってるが、お値段も手頃なので(6500円・・・エンゲキ界ではこの値段設定は確かにお手頃)お勧めする次第。
それにしても、野田秀樹は本当にイヤミなほど秀才だ。
・・・やっかみじゃないよ? ホントだよ。(←やぶへび)
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