カウントシープ
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明日は相方は病院に行く。手術後初めての大きな検査をしにいくため、つまりは再発していないかの検査をするためだ。
多分大丈夫だろうと思いながらもやっぱり不安は付きまとう。癌が発見されるときだって、多分大丈夫だろうと思っていたのに、結果は悪性だったのだから。 あとからあとから悪い情報が追加されて、希望の変わりに不安と諦めが追加されていったのだけれど、いざそれが現実ならば仕方ない。諦めて受け入れるしかなく、また心とは流動的で、時間を追うごとに、それがそうなることであったように感じていったのだ。
しかしそれは表面上のことで、病気はひそやかにボク達の心を蝕んでいった。冬から初夏にかけて、ボクは仕事と生活に最低限必要なこと以外、何もする気持ちに慣れなかった。絵も描けないし、本も読めないし、犬の散歩も怠りがちになっていった。
その中で唯一手にしたのはヴァイオリンだった。何しろ先生が出した課題が背後から追ってくるのだから、やらざるを得ない。そのことも考えた上でのレッスンだったが、そうしてよかったと思う。暗い家に、週に一度ヴァイオリンを背負った先生がやってくる。先生のヴァイオリンはボク達の憧れであり夢となった。先生のために選んだ紅茶、お菓子、そうしたモノたちが、死にゆくボク達の心を外に引っ張り出してくれた。
先生にこの気持ちを言葉で伝えたことはないし、これからも伝えるつもりはない。いつか音に載せて先生のために演奏ができたらと思う。
ロビン
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