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メロディの無い詩集        by  MeLONSWiNG
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消えた男 2003年07月24日(木)


名前も記憶も失くしたままの僕は
いつの間にこの部屋に
たどり着いたのだろうか

何となく見覚えの
あるような薄暗い部屋の片隅に
背中を丸めて眠る1人の男

呼んでみても 返事がない
生きているのか
死んでいるのか
分からないけれど、ただ
かなり汚れた身体から
枯れた草のような匂いがした

この部屋から出ようとしたけれど
外から鍵がかかって
出ることが出来なかった

窓も開かない 電話もテレビもない
新聞もない 今日という日が
いつなのかも判らない

彼の口から 囁くような声
何を言っているのか
訴えているのか
分かるまで少し 時間がかかった
指さすその先に
一冊の古ぼけたノート

そこにはこれまでの
彼の人生が 事細かに記されていた
気分が悪くなるくらい
最低な 人生

同情も出来ないほどに
汚れた過去の報いで
彼は今 この世から
消えようとしてる
消えて無くなろうとしている

机の上には 3枚のコイン
1枚の写真
そして不思議な形の
黒いオブジェ

彼はそれらとノートを
僕に託して
死に臨んでいる

僕の手を握り
見苦しい涙を流し
微かな匂いを 漂わせ
静かに 静かに 透明になって
完全に 姿を消した

温もりだけが手の中に残った



その後 いつの間にかドアは開き
僕は自由になった

実はそのままその部屋で
今も僕は暮らしてる
彼の名前をそのまま使って
いま 探し物をしている

探す義理は ないのだが
気にかかることが一つあって
見知らぬ街を彷徨っている
消えた男の 涙を思い出すたび
少しだけ イヤな気分になりながら


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