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 生きてこそ

おそるおそる 胃カメラを飲んできた。
「おいしいよー」とか「緊張すると 喉を傷つけるよ」とか
外野の いろんな ヤジとも経験談ともつかない 応援を
背に受けて、逃げ腰になりながらも、娘よりも若い
看護婦さんの 丁寧な説明を ワカランチンの年寄りを
相手にしてるんだろうな、と 同情半分に聞いて、
「ゲッ」とか なりながら なんとか飲み込んだ。

あとは きれいなピンクの波打つような胃壁と 
十二指腸の洞窟みたいな入り口に 映画をみるように
魅せられていた。
「私の内蔵ちゃんたち。はじめまして、きれいねー。
どこにも 突起もクレパスもないね。よかった、よかった」
先生に 思わず ピースマーク。先生も「きれいですね」

どこも悪くない というお言葉にもかかわらず、
一応 胃の薬をいただいてきた。なんとなく すっきり
しないから、薬でなおしてあげよう、と。
あんなきれいな 胃袋ちゃんだから 大事にして
あげなくちゃ。

27日に 大腸検査をしてもらう。
検査そのものよりも、前もって渡された下剤に 辟易。
「これ 全部のむんですか?」
「はい、ここに、飲む日にちと 時間を書いておきますね」
1リットルの 尿瓶みたいなのを 渡されて、帰って来た。
一難去ってまた一難。でも 又きれいな腸をみてみたい。
「私の大腸ちゃん、がんばろうね!」

落ち込んでいて、胃だか腸だかに なにかあっても
もう子供達も独立したし、引退の身だから、
「もう、いいか」っていう気持ちになっていたのだが、
その話をしたときに nさんが、「私が病気になったとき、
どうでもいいって 思った?」と 聞いた。
「そんなことないよ、勿論」
「私達も 同じよ。あなたになにかあっても、もう
どうでもいい、とは 思わない」
そうか、自分のことしか 考えていなかったね。
心配してくれる人が いるんだな、って その時思った。

自分の親が 亡くなった時だって 「とにかく 生きて
いてくれるだけでいいのに」と 思ったことも忘れていた。
子供達も きっと そう思うだろうから、とにかく
生きていなくては。そうよね nさん?

 


2003年10月14日(火)
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