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2001年10月30日(火) はからずも、はからずも・・・

 「さよなら、小津先生」第4話を見ていて、ふと、言葉が出てきた。「はからずも」番組を見ながら「はからずも、はからずも・・・」と心の中でつぶやいていた。

 田村正和演じる、高校教師、小津は、銀行マンになるべくして生まれてきたといっても過言ではない、と、人からいわれるほど、銀行を成長させるため、守るため、時には法を犯してまで、そして刑務所に入ってまで、銀行マンであることを自分自身の全てと思っていたような男である。オツトメが終った後、まさか、その銀行側から解雇され、他の銀行への最終就職すら邪魔されるとは思いもしない、ある意味おめでたいくらいの男だった。銀行の利益になるためなら、どんな情にも流されない、そんな男だった。

 一生そのまま、生きていくはずだった。しかし、現実に解雇され、銀行への再就職ははばまれ、次の銀行マンとして働ける日まで、生活するためだけに、銀行の同期である友人の紹介で、高校教師になる。はからずも。

 妻から離婚を言い渡される。実はN.Y.に送られていた離婚届すら開封していないような男で、彼には青天の霹靂。妻の気持ちなどわかるわけもない。わかろうともしない。そこへ娘が帰ってくる。その言葉をいいながら、涙を流す娘。「あんた、幽霊みたいだ。」どういうことだ?と聞く父に耳も貸さず、部屋へ閉じこもる。妻(母)が彼女を追う。一人、リビングで、彼は離婚届にサインする。
一流ホテルしか知らない男のホテルライフが続くわけがない。最初の出会いの印象は、最悪の軽い男であった、カトケンこと英語教師(ユースケサンタマリア)の部屋にいつの間にか居座り、同居生活が始まる。はからずも。

 谷啓が校長を務めるその私立高校は荒れていた。生徒もやりほうだい、教師もそれを放任し、事件があれば処分する。ほかに方法がない。生徒と教師をつなぐすべを模索する教師もそれを言葉や態度で願う生徒もおらず、未来もなく荒れていた。聞けば、前の学校でそれぞれ、いじめや不登校など色々な問題で、いられなくなった生徒を受け入れているのだと言う。同じように、前の学校で問題を起こしたりしていられなくなった教師が、教師であることを半分投げやってここにいるのだという。
 そんな状態の中、授業に出ようが、職員室で問題提起されようが、小津は、銀行マン復帰までの腰掛けのつもりなんだから、教師の自覚はさらにない、そんな彼が、2年1組の問題の生徒であり、たった5人のまったく練習をしないバスケ部員である子供たちと、取っ掛かりを持ってしまう。はからずも。

 小津は大学までバスケをやっていた。銀行マンになるためにいい時期で辞めた。その後はNBAを楽しむあくまでも銀行マンだった。彼は、5人の生徒の3人はバスケの経験者だと言う事を見抜く。さっき言った「とっかかり」とは、そのうちの一人、いつも紙飛行機を飛ばす生徒に、「教科書は破るな」と注意したところ、「あんた、幽霊みたいだ」と言われる。娘に言われたことと同じだ。気にかかってしまう。ぼろぼろに負ける(女子のために組まれた)試合を観に行ってしまう。そして本当は、彼らが、バスケをやりたいんじゃないかと、見抜いてしまう。顧問を買って出てしまう。はからずも・・・・。

 メール・ジャンキーだった、生徒。彼が、2学期で進学校に移るために転校手続きを取りたいと父親がやってくる。疑問を感じた小津は彼に尋ねる。銀行にバブルの時代、ほいほい金を貸してもらえるままに借りていたところ、その時代が終わり、不動産業を営む、彼の父は、もう借金を返済できず、倒産がみこまれ、彼は、北海道に帰って、3学期からは働かねばならない状態が、現実であると知る。76ersの赤いタオルは、「バスケ頑張ってみなさい」と、今は家を出て行ってしまった、母からの送り物だった。彼に言う。「バブルなんて、もともと銀行がつくったものでなかったんだ。」これは彼らがはかったことだった。

 経験者一人が、いじめにあっている現場に小津が通りかかる。恐喝を止めた。「彼は私のクラスの生徒ではないが、彼は私の大切なプレーヤーだ!二度と手を出すな!」たんかをきっていしまう。これは、経営者としての義務感からだろうか。しかしこのことで、はからずも彼の信頼を得る。
 もう一人の経験者、彼は美術の教師(京野ことみ)が好きである。「会いたいから、いつもの公園にいるから来て欲しい。」と電話する。京野は、小津に電話する。「彼らは、公演にいるわ」

 メール・ジャンキーの彼は、転校の事を仲間に伝える。それまでは、いじめや引きこもりで一人だったのに、こうやって外にもでられて、みんなと何をやったわけでも無いけど楽しかった。そして、「勝つ、ってどんな気持ちだろう?」自分たちはいつも負け組みにいるけど、勝ったらどんな気持ちがするだろう。小津はそれを聞いていた。自分の人生もこのまま負けたんじゃないか?と、生徒に言われたとき、自分は負けたまま終らない。と言っていた、それを、その気持ちを彼も今、感じている。

 何夜か体育館で待ちつづけた後、5人が集まる。小津の監督は嫌だと言う。「それでも結構、じゃ、カトケン任したよ」去る小津。メール・ジャンキーの家を訪ねる。銀行マンが、取立てにきている場所に出くわす。
 実は、体育館で待ちつづける日々のある夜、銀行から、不良債権の整理のために呼ばれる。小津しかできない、と。そして、銀行マンとしての復帰を約束される。その場で小津は、銀行を守るための、厳しいやり口を後輩に叩き込む。しかし、彼は、体育館に戻るのだ。今夜当たりくるかもしれないと。小津がやってきたこと、正しいとしてきたことが、はからずも一人の生徒のやっと見た夢を奪う。

 女子の監督に急いで練習試合先を探すよう依頼する。結果は、負け。だけれど、メール・ジャンキー=仲間のために、「勝ちたい」という意識、それには、チームワークと小津の作戦が必要だと気づく。彼らにとっても、一番嫌悪するべき種類の大人であった小津が、はからずも彼らの心をノックしたのだ。
 そして、谷啓の跡を継ぐ経営者になる娘(西田尚美)が、無銭飲食をした彼らの処分をまかされるが、「できない、できない」「わからない」「生徒が怖い」と、泣いてばかりいた。この日の試合の後、自分で「背部を言い渡す」とやっと決意した。ところが、彼らのことを「信じたら裏切られる、そんなやつらだ!」と言う、小日向に向かい、泣きながら言う、「そんな風に、言わないで。私の子供たちなんだから」はからずも、小津が「幽霊ってどういうことか」それを知りたいために、はじめたものだったようなことが、どんどん、人のカラを壁をとっぱらっていく。計算づくでなく。

 小津は知っていた。メール・ジャンキーの生徒が、一両日中に夜逃げするほど差し迫っている事を。試合の夜、生徒から「ごめん」という電話が入る。他の4人に彼の家の前での集合をカトケンにかけさせる。門扉に、彼の76ersの赤いタオルが結ばれて残されていた。

 それを見つめ、生徒達は小津に言う、「勝ち方を教えてくれ」
 
 小津は将来性を見ることができるだろう、戦略も立てられるだろう。経営のプロだった。何億という金を毎日動かしていた。多少、人間を見る目はあり、もしかして、という計算があるかもしれない。でも、すべては、はからずもはじまったこと。そして、動き出した。大きな分岐点でなくとも、日々と言うものは、詳細に見つめなおすとそういうことの積み重ねなのかもしれない。はからずも・・・
 
追記 メール・ジャンキーの彼は、途中で携帯の料金を払えずに止められる。授業中も止めなかった彼は実は、母とメールしていたのだ。


もっちゃん |M@IL( ^-^)_ヲタ""日常こんな劇場( ^-^)_旦""

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