【読書記録】豊島ミホ「ぽろぽろドール」

人形をモチーフにしたファンシーな一冊。表題作のぽろぽろドールの存在感たっぷりで、豊島さんの作品は好き嫌いに左右されない強烈な印象を残す作品がちらほら出てきているなというのが私の印象でした。
好きだった作品は、「手のひらの中のやわらなか星」――田舎から都市部の進学校に進学した主人公は、生まれて初めてそこで自分の容姿について考え、絶望する。そんなときに目にした人形の存在が、こんなに大きく色濃く彼女(主人公)の人生に反映してくるとは思わず、途中までの息苦しいような展開からラストまでがとてもきれいにまとまっていたように感じました。いつも誰しもが主人公にはなれないけれど、自分の人生であることに変わりはなくて…ということを改めて考えました。
心象心理という点において、「きみのいない夜には」もあげたいと思います。こちらは、嗜好品としての大人のためのお人形を愛でる主人公。彼女が不意に目にした人形と、運命的な出会いをしてネットオークションで手に入れる。この人形の愛で方が主人公のキャラクターを作っていて複雑で、彼女の深層心理は私にはきっとわからないけれど、読み終わってからも登場人物の気持ちについて考えた作品でした。強いまでの衝動のような力、なりふりかまわずにほしいと思える欲求と気持ちがとても心に残りました。彼の行動は決して間違ってはいないと思う。それが一般的で、やはりそうあるべきだけど、彼女にはそれでは足りなかった。それが結論…でしょうか。
最後に、書き下ろし掌編として「僕が人形と眠るまで」があります。豊島さんとドールがタッグを組んだ時点でもびっくりしたのですが、ラストにふさわしい総括作品だったと思います。――美しいこと、それが織り成すさまざまなこと、またそれを自然と享受している人たち。NO.58■p230/幻冬社/07/06
2008年10月22日(水)

ワタシイロ / 清崎
エンピツユニオン