昼頃、両親と共に家を出て、南大沢のヴァージンシネマへ映画「座頭市」を観に行った。言い出しっぺは私である。 家から20分ほど歩くと、「南大沢」の駅に出る。忘れもしない13年前の正月、「今度ここに引っ越すんだよ」と親に連れられてこの駅へ降り立った時は、目の前に広がった荒涼たる草原を見て「何の因果で、こんな所に……」と我が身の不幸を嘆いたものだった。それが今ではどうだろう。かつて草原だった場所にはイトーヨーカドーがそびえ(その前に、そごう、ダイエーなどが次々にやって来てはつぶれていったが)、かつてDJパトリックが来て野外レイブ(?)をやった空き地には巨大アウトレットモールが広がり、かつて断崖絶壁だった場所には、スターバックスやヴァージンシネマが軒を並べている。諸行無常である。 映画「座頭市」は、とにかく殺しのシーンが多いなあ、という印象であった。駅へ向かう道すがら、両親の間で「『座頭市』は、何が売りなの?」「殺しのシーンだろ?」「私、そういうのダメだわ」といった会話が繰り広げられていたため、人が死んで血がピューッと飛び散ったり、斬り落とされた腕がアップになったりするたびに、隣りに座っている母が気になって仕方がなかったのだが、映画が終わって母に「キツくなかった?」と訊ねたところ、「そんなの気にしてたら、観てらんないわよ。でもあの映画、外国の人はどう思って観たのかしらね」という答えが返ってきた。評判の「タップダンス」シーンは、確かに「蛇足」感はあったが、個人的には「華やかで良いなあ」と思った。何より「大楠道代がタップを!」というのが、衝撃的であった。 ちなみに、ここでも私は、安い親孝行をしようと試みて、アイスウーロン茶を3つ購入したのだが、「映画を観ながら飲食する」というアメリカナイズされた行動様式は、60過ぎの両親には受け入れがたかったらしく、映画終了時、ウーロン茶はほとんど口をつけられないまま、破棄されることとなった。がっかりである。また、私が言い出しっぺであったにもかかわらず、映画のチケット代は全額、父が負担してくれた。両親はシニア料金で、各1,000円ずつ。私は一般料金で1,800円。これで昨日のケーキも、今日のウーロン茶もチャラである。「いつか大金持ちになったら、必ず豪華海外旅行でもプレゼントするからね」と、心の中で手を合わせた。「いつか大金持ちになったら」って……。30過ぎて、この仮定法未来は、我ながらどうかと思う。
●今日の行動 ・父から「最近、読み返してみたが、やはり良かった」と、夏目漱石の「こころ」を手渡された。学校の先生からも「漱石を読め」と言われているので、「陽暉楼」はとりあえず、後回しにしようと思う。岩波文庫はリニューアルしたのか、非常に活字が読みやすい。 ・今日になって発見したのだが、この枠の下にある「MAIL」をクリックすると、「森村明生(三十路・シングル・失業中)さんにメールを送る」と書かれたメールフォームが出てくる。自分でつけたタイトルなので仕方がないが、名前の後にこういうカッコがつくと、何だかダメ押しされているようで腹が立つ。
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