「硝子の月」
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「わ、悪かった! 俺が悪かったよ! 飯奢ってやるからやめさせてくれ!」 「そんなことくらいで…」 グゥ… とりあえずそういうことになった。
「ったく、何が悲しゅうて俺がこんなガキに飯を奢らにゃならんのだ」 「何か言ったか?」 「いーえー、ベーつに−」 パスタを食べる手を止めて、ティオは警戒の目を向ける。晩飯を奢ってもらったくらいで懐柔される程素直な育ち方はしていない。 「せめて年頃のかわいいねーちゃんだったらなぁって言ったのさ」 男にはさほど悪びれた様子もない。果実酒をまるで水のようにあおっている。 「よう小僧、奢ってやってんだから名前ぐれぇ名乗れや」 その理由が自分にあることを忘れたとでも言うのだろうか。 「…………」 「じゃあ『小僧』でいいのか?」 黙々と食事を続けていると、男は口元にからかうような笑みを浮かべてそう言った。
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