「硝子の月」
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もっとも、元々この至近距離で視線がきれいさっぱりと自分を避けていたはずはないのだが。 「あー、お嬢ちゃん」 いかにも仕方なさそうに口を開く。少年本人に絡むよりも効果的な嫌がらせを思い付いたからでもあった。 「同じものって結構量あるけど?」 「おい!」 少女を受け入れる発言をすると、ティオは案の定苛立ちの声をあげた。 「何でそうなんだ、このオッサン!」 「だぁれのことかな家出少年。そういうことを言うのはこの口か?」 「あんふぁ、以外の誰がいんだよ!」 ほっぺたを抓り上げる青年の手をすぐに不機嫌に叩き落として、彼が今にも掴み掛からんとしたその時に、 「でもその人、『オッサン』ってほどの歳には見えないけど?」 きょとんとした顔で少女が口を挟んだ。 一瞬の、間。 「よし、飯はお兄さんが奢ってやろう」 「おいっ!」 「俺はグレン・ダナス。お嬢ちゃんは?」 益々不機嫌な約一名はout of 眼中である。
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