ぶつぶつ日記
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2001年11月05日(月) 帰巣本能

電車で爆睡している人は日本ならではの光景だそうだ。
隣の人が寄りかかってくるのは重いし、
これが油てかてかのおやじだったらうげ〜と思ってしまうし、
こっくりこっくりされるのも、
あれはあれでけっこううざったい。
そして不思議なのは、そこまで意識が遠のいていながら、
自分が降りる駅になると全ての人が、
がばっと起きだし、何事もなかったように電車を降りていくこと。
う〜ん、人間の動物的本能ってのも案外失われていないなあ。
体が時間的距離的感覚を覚えているのね。

時間的距離的感覚と言えばもう一人、
絶対に忘れてはいけないお方がいる。
我が家の近くには公営賭博場があり、
すっからかんにすったそこに来るおじさん達が
庭先の自転車は盗むは、
店先の糸こんにゃくは盗むは、
立ちショ○はするは、ごみは捨てるは、
けっこういい迷惑なのだけれど、
毎回毎回ここで公営賭博競技が行われると、
駅や酒屋の店先が勝手に「飲み屋」化してしまう。
おじさんたちが酒を片手に勝手に集ってしまうのだ。
話題はもちろん、今日のレースの反省会・・・。
まあ、こういうおじさんたちは、
大体無料バスが終わる時間には三々五々散っていく。
しかし、1人だけ、夜になっても酒屋の前に座り込み、
管をまいているじいさんがいる。
アラビア語の授業がある日はここを通るのが
9時半過ぎになるのだが、
まだいる。
私が住んでいる区は交通の便が大変悪く、
区民は自嘲地味に「東京の中国」などと言いながら
自転車を愛用しているのだが、
このじいさんは自転車もないようだ。
その上バスはすぐに終バス。
9時半にこれだけ管を巻いているってことは、
どう考えても終バスには間に合わない。
最寄の駅までは歩いていけないことはないけれど・・・・。
夏であろうと、冬であろうと、じいさんは管を巻いている。
寝込んでいるときもあるので、冬などは凍死しないかと心配になるのだが、
騒ぎにもならないし、
実際まだじいさんはそこに来るので、凍死はしないらしい。

多分、人間にも帰省本能があるのだろう。
ある時間になると、じいさんはむっくり起きて、
ぶつぶつ文句を言いながら家に帰って行くんだろうと思う。
海外に生活していて、どんなにその国がすきでも、
やはりほとんどの人が何年かに一度は生まれた国に帰りたがる。
それも一種の帰省本能なような気がする。
帰省本能に従って、帰りたい時に国に帰れる者は幸せだ。
帰りたくても帰れない人が、
地球上にはあふれている。
帰れないからこそ・・・、
「ふるさと」のイメージは清く鮮麗で、
強く大きくなっていくものだろう。
各国に住むパレスチナ人にとっての、「パレスチナ」のように。


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