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2003年08月12日(火) |
五木寛之さんのこと (3) |
今朝、アパートのパティオにおいてあるハイビスカスがふたつも、私の手の平よりも少し大きいほどの花を咲かせました。大きな花びらをぐっと延びをするように力強く外側に伸ばして、りんと上を向いてさんさんとした陽射しを浴びて咲いています。花の中央はピジョンブラッドと呼ばれるルビーの色に似たそれは深紅に近い色ですが、外側に向かってグラデーションをなし花弁の外側は真白です。
昨夜、眠りにつく前に日本から送ってもらった五木寛之さんの最近のインタヴューをビデオで見たのですが、戦争体験を語られている姿や、私が想像もしなかった五木さんの苦悩に、心から涙しました。戦争体験を語る五木さんの言葉をかみしめ、私自身の存在の軽さ、と同時に、そのような極限状態を体験していないからこそ保ち得る心の柔軟性を持つ自分、という両方の存在に対してちょっとした戸惑いを感じてしまいました。
私は以前五木寛之という作家の方をどこか自分の容姿に自信をもった流行作家という偏見の目で見ていたため、五木さんの作品を手にすることはありませんでした。こちらに来て初めて作品を数点読むうちに、とても読みやすく、私の内に素直に入ってくることに気がつき、「あら?」と感じていました。そしていくつかのエッセイや小説を読み、また、インタヴューを見て、私は五木さんを大きく誤解していたことにひどく申し訳ないような気持ちになりました。
画面の中の五木さんはもう70歳とのことでしたが、そのお年には似合わない、以前と変わらぬ豊かな頭髪をもち、素敵なスーツに身をまとっていらっしゃいました。と同時に目じりは下がり、年齢を感じさせるしわや陰影を顔に反映して、柔らかさと落ち着きと貫禄を持ち合わせた素敵な紳士という印象でした。
今日は練習を早めに済ませるようにして、夕方にはゆったりとした気分でお風呂に入りながら、読書をしました。傍らでは愛猫がとても興味深そうにお湯を眺めていました。
五木寛之「哀しみの女」読了。
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