キ ミ に 傘 を 貸 そ う 。
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2005年01月24日(月) |
また掛かってきた電話。 |
携帯電話の着信音が鳴った。 番号を見ると全く知らない番号。 何処の地方からかけているのか全く分からない番号だった。
「?」
とりあえず出てみた。
「・・・はい。」
男の小さな笑い声がした。すぐ分かった。 でも間違っていたら馬鹿だなぁと思って静かに聞いた。
「・・・・・・蓮?」
「うん。」
分からない番号で当たり前だ。 蓮は今遠くの届かないところに居る。
「先輩の引越しパーティーで飲んでたんだけどさ、寝れなくて。」
寝れないから私に電話してくるなんて嘘だ。 本当はまだ元彼女のことが忘れられなくて、どうしようもなくて、どうすることもできなくて、途方に暮れて。 男の居ない私を思いついて、うん。意味は特に無い。 言い聞かせる。自分のそれに意味はあるのか気付かないようにして。
去年の冬に会ったとき、隣に座った。 私は小さくて、蓮は大きかった。 その蓮の腕が抱きしめたい彼女には、もう婚約者と言っていい程の人が居る。 蓮は苦しくてしょうがないんだ。どうしても忘れられない恋だから。
「酔ってるの?とりあえず水飲みな。(笑)というか寝た方がいいよ。」
私は蓮の男友達でも丁度いいだろう。
「ううん。もう酔いはさめた・・・。ごめん、特に用事もないのに電話して。」
そんな風に謝らないで欲しい。素直じゃない性格のくせに。 それってずるいんだよ。
他愛も無い会話がどれだけ大事か知ってる。 意味も無い電話がどれだけ安らぐか知ってる。 それを私に託さないで欲しい。
だって私蓮を好きになっちゃいけない。 蓮は彼女のことしか見えてない。見えない。見たくない。
大丈夫、私は大丈夫。ブレーキならいくらでもかけられる。 だから今は平気だ。 これじゃ強がってるみたいだ。 でも本当に大丈夫。
結局3時間くらい話してた。 何を話したんだろう。あまり覚えていない。 なんだかまた電話が掛かってくる気がする。 でも私の予想はよく外れるから忘れていたい。
蓮はずっと孤独だったんじゃないかと思う。 厳しかった父親と母親はいつの間にか離婚し、複雑な状況の中で育った。
「俺、別に母親とも仲良くないし・・・兄貴ともしゃべらないからね。」
蓮がまだ遠くに行く前にぽつり、とこぼした。
「ばーちゃんが元気でいてくれればいい。」
きっと蓮のおばあさんは蓮の面倒をよくみたのだろう。 蓮は愛されることに慣れてない。 だからって私が蓮を好きになって、蓮を愛してもしょうがないのだ。 せめて早く蓮の傷が癒えればいいと思う。
今度また電話が掛かってきて長電話したら、また蓮のことが気に掛かってしまう。 蓮を好きになってはいけない。
「はるも頑張って早く良い男見つけな。」
はいはい。頑張りませんよ。
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