キ ミ に 傘 を 貸 そ う 。
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2011年02月28日(月) |
いろんなカタチの『好き。』 |
アイツは何故か、実際に会うと『都築さん。』て私を呼ぶのに メールだと、『はる。』って下の名前で呼ぶ。
私はどうにも裏表のある人が苦手で。 それは自分がまさに裏表のある人間だから。 人の心、つまり裏を読めてしまうから 人がどんどん怖くなる。 どうしてこんな能力があるんだろうって思ってしまう。 人の裏なんて見たくないのに。
でもアイツは。 裏表なんて殆どなくて。 一瞬腹が立ってしまうくらいに、思ったことをすぐ口にするから 私は安心して、いつもアイツの話が聞けるんだ。 アイツの言うことは疑ったことない。
普段、あまり行くことのない渋谷の街で きみは酔った顔でじっと私の目を見る。
酔うのが怖い私は いつだって酔えなくて きみが酔った時も冷静でいるようにしている。
きみには大好きな彼女が居るけど それでもきみは私が好きで。 でもそれは”助けて 優しくして”って好きで。 私を愛するための”好き”ではない。 ずーっと続くような、愛に変化するような、”好き”ではない。 私には分かる。
きみは言う。 ”優しいはるが好きだ”って。
ううん。言葉で言ったことはないけど いつだって目がそう言ってるんだ。 メールでもそう。
あたしには分かる。 きみには今の彼女しか居ないんだって。 きみには今の彼女が一番合うし、幸せになれると思う。
私と王子とは違うの。きっと。
「はるはどうして遠距離なんかできるの? オレだったら絶対無理。会わないと無理。 どうして淋しくないの?冷めてるの? もしかして彼氏のこと好きじゃないんじゃないの?」
分からない。 そうかもしれない。
きみが酔い始める。
私は、普段あまり男の人に触らないようにしている。 一種の、自分の中でのマナーみたいなもの。
とうとうお店の椅子で、ぐったりしながらきみが眠り始める。 ほんとに心配になって、「大丈夫?」と、その日初めてきみの肩に触れた。
『俺が酔ってつぶれたら、どうしてくれるの?』
酔う前にそう言ってたな。 きみの欲しい言葉は分かってるけど、 言ったらずるい女になるから、言わない。
私もきみのこと きっと好きだけど。 色んな種類がある”好き”のうち、どれに当てはめればいいのか分からない。
もしきっときみに抱きしめられたら その腕をふりほどける自信があまりない。 けれど、その瞬間王子を愛しく思うだろう。 王子に抱きしめられたいって思うだろう。
好き って 一体何なんだろう。
一人で居ることが淋しいと思うことも 誰かを想って哀しくなることも、せつなくなることも 王子に会いたいって思うのも きみを救いたいって思うのも
多分それは生物としての本能から来るもので。
愛して欲しいとか 優しくして欲しいとか
多分それも本能の一種なんだ。
そんな風に、私の頭のどこかで理性が導き出す。
きみと遊ぶ日はたいてい終電間際になって いつだってきみは酔っていて きみと私の中間地点の渋谷でお別れをする。
きみと私は違いすぎる。 王子と私が違いすぎるように。
思い描くものが同じになる人なんて居ない。 理想が現実になる訳がない。 そんなこと分かっているのに。
私はきっと王子が好きで 王子もなんとなく私を好きで、 きみは彼女が大好きで、 でもきみは私のことも好きで。
人を想うって一体なんなんだろう。
王子の居ないこの国は、私には広すぎるよ。
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