キ ミ に 傘 を 貸 そ う 。
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2011年12月11日(日) |
『終わり』の始まり。 |
Aさんは、私の手を自然にとって、手を繋いでくれる。
王子は優しかったけど、手を繋ぐのが下手な人だった。 繋ぎ方が不自然で、私が握っていないとすぐに手が離れてしまうような。 こんなに不器用な人って居るのか?って思うくらいだった。
東京はいつの間にか冬になった。
王子様と、きちんとお別れをした。
最後まで優しくて、私のことを責めなかった。 私が「できることなら友達に戻りたい。無理なら、それでいい。」と言うと 「友達でいいよ。」と王子は言った。
王子の部屋のカギを返した。 「返さなくていいよ。自由に入っていいから。」と言われたけど そんなケジメが無いのは嫌だった。 心の感度を下げて、痛くならないように、何も感じないように、 カギを返した。荷物も全て返した。 私の荷物も全て受け取った。 王子様が作ってくれた、美味しいシチューを食べて、お別れをした。 かなしくて、さみしい、そして少し未来に向かった日だった。
夜の東京を、Aさんと歩いた。
冷え切った私の手をとって、Aさんが歩いていく。 寒い日でも熱いAさんの手が私は好きだ。 Aさんは私の手をあたためるように、冷えた個所をぎゅぅ、と握る。 最初は手のひら、そして手のひらがあたたまったら指先、というように。
そんなAさんを、私はまた愛してしまう。 好きになれば好きになるほど、かなしい。
その日は朝まで一緒にいることになった。 一緒に居たのは、それで2回目だった。
Aさんは寝る前に「おやすみ」とメールをくれる。 それが何を意図しているのかは分からない。
『遊んでばっかりじゃ申し訳ない。メールくらい送ってやるか。』 とでも思っているのかな、と解釈している。
このまま愛し続けても、未来なんて無いんだよ。
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