水野の図書室
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皆さま体調に気を付けて今日も良い一日でありますように。
ホラーというより、ファンタジーだと思うのが乙一著『天帝妖狐』(集英社文庫) えっ!?これ、ホラーなんですか?これがホラーなら、わたしは今まで 食わず嫌いをしていたわけで、乙一さんの本との出会いに感謝しなければ! あまり怖くないです。怖さを期待して読むと(あれっ?わたし、期待してたかも) 肩透かしかもしれません。
主人公、夜木は11歳のとき、ひとり家でコックリさんをしていると現れた “早苗”の巧妙な手口にのり、「永遠の命」と引き換えに“早苗”のこどもに なると約束してしまいました。 「永遠の命」・・それは、病気や怪我をしたところが、すぐに別の体へ 入れ替わり、再生されてしまうという恐ろしいものだったのです。 “早苗”とそんな恐ろしい契約を結んで4年後、夜木は人間社会にいることが できなくなり、家を出ました。
20年の放浪の果てに、杏子という女子高生と出会います。杏子は、顔の下半分、 両手両足至るところ包帯で覆われ行き倒れていた夜木を見過ごすことが できず、家に連れて帰りました。夜木は、杏子とこころ通わせていき、人間として 普通の生活を味わいますが、そんな生活は長く続かず・・悪意に満ちた人間が 夜木を襲ったとき・・
死を許されない永遠の命とは、孤独です。 夜木は、11歳くらいのこどもなら誰もがもつような死への畏れから、 こんな契約をしてしまうのです。はぁ・・悲しい・・ 杏子の純心が、夜木のこころをひらいていくあたりは、明るい未来が 見えるような気がしたのですが・・
途中から、泣きたい気持ちになりました。 夜木と杏子の別れのシーンは、せつなく、せつない度は上がるばかり・・ 出会ったときから、決められていたような別れ。 この別れのシーン、いいです〜(涙しながら、喜びました・・)←どんな性格?
わたしの持論では、別れのシーンとふたりだけの食事シーンを巧く描く作家は 恋愛小説をきらきら書いていけるのです。
≪乙一さん、恋愛小説を書いていただけませんかーーー!!≫
『天帝妖狐』、129ページ。せつなさに涙した35分。 夜木を見かけたら・・わたしは、声を掛けられない・・
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