最近、わき腹の、ちょうどベルトの上あたりに、なにか見慣れないものが乗っかってきている。
パンツのゴムの上にはみ出したその「ふくらみ」を鏡で見たとき 「あんぢゃこりゃ!?」 松田優作ばりの声が漏れた。
痩せ型のマユゲとしては縁のないものだと思っていた「タイシボーズ(体脂肪)」が、いつの間にかこんなところに居場所を見つけてしまっていたのだ。これは何たること。わき腹のお隣り、背筋に戦慄がはしる。三十を前にしてすでにオヤジ体形化してきているのか?
考えてみれば、身に覚えはあり過ぎるほどあった。毎日忙しく動き回っていた仕事を辞め、週末汗を流していたリベンジャーズも離れ、旅先でのオイリーフードとビール三昧……。街歩きこそ日課だったものの、運動と呼べるようなことはこの九ヶ月間全くと言っていいほどやっていない。
そんなわけで十月のある日、突如思いたってプール通いを始めた。水泳は全身運動だし、体脂肪を燃やしてくれるに違いない。それ以来、週三回泳いでいる。初日こそ500メートルも泳いだらグッタリしてしまったのだが、徐々に距離は増え、今では毎回二時間、少なくとも2キロは泳いでいる。
そもそものモチベーションこそ情けなく不純なものであったが、いざ始めてみるとこれが結構楽しい。無心になって泳ぎ、しっかりと体を動かして汗をかく。そして泳いだ後喫煙コーナーの椅子に気だるい体を投げ出し、カップベンダーのキリン「力水」80円を飲みながら一服する、というのが至福の喜びになってきている。運動することで精神的にもハリが出てきた気がする。来年の海外生活へ向けての体力づくりにも持ってこいだ。
ところで問題の体形のほうはどうなったか。一ヶ月たってみても、腰に居座った「タイシボーズ」たちに立ち去る気配はいっこうに見えない。下手すりゃ増えたんじゃないかとさえ思ってしまうほどである。たかだかひと月ではやはり効果は出ないか……。
そこで思う。
「世のなか、やったらやった分だけ見返りがあるかというと、必ずしもそうではない。 しかし、やらなかったらやらなかった分確実に、その報いはやってくる」
マユゲの闘いはつづく……。
2001年11月11日(日)
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