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彼の女たち - 2012年05月11日(金) 『忘れたくても忘れられない18年前のあの夏。女たちは、 パンクバンド「ガーゼ・スキン・ノイローゼ」のボーカリスト、 Jに出会い、人生が変わった。』 『女たちが夢中になったのは、一発屋ロッカー・J』 『私たちは、確実に生きてきた』 その見出しに惹かれて読んだ。 ひときわ強く心に残ったのは、角田光代「楽園」だ。 「最下層」の高校生活のある日、女子高生ノンコは、Jに出会い、運命を感じる。 懸命に痩せ、仲間とファンクラブを作り、必死でJと繋がろうとする。 頼み込んで頼み込んで処女を捧げる。いじらしい。 その後も周りの女の子たちを蹴落とし、最終的に妻の座を手に入れるのだけれど、 陽のあたる場所に立つことはない。 落ちぶれたJを支え、「復活」ライブの為に奔走する。 愛されているんだかいないんだか、ちっとも報われてはいないように、 見えるけれど、こんなに一途に愛する対象に出逢えたノンコを、 「楽園」を信じ続けようとする、その強さを持つノンコを、 羨ましいと思った。 それにしても、嶽本野ばら、唯野未歩子、井上荒野、江國香織が描く女たちも、 それぞれ個性的で生き生きと息づいているのに、 彼女たちの人生を歪めちゃったJ本人ってのが、 私には、あまり魅力的に感じられなかった。 女にだらしなく優柔不断で生活力の欠如したダメ男。 母性本能くすぐるタイプなのだろうか。 多分ステージに立つと一変するのだろうねえ♪ 嶽本野ばらの「プリンセスプリンセス」の中に ある女の子がJのどこが好きかを『私は彼の生き様です』と 宣言する場面が出て来る。 「彼の生き様が好き」ってさあ、私も十数年前に おんなじ事を当時あったロキノンのBBSに書いた事があったわよ。 超恥ずかしい。 吉井和哉の生み出した作品を聴いて、LIVEパフォーマンスを観て、 雑誌や映像を目にして、その人の生き様までをも感じられると、 本気で思っていたなんて、思い上がりも良いところだ。 「吉井和哉」は幻のひと・・・ そう捉えているくらいがちょうど良い。 巻末の作家5人による制作秘話座談会で、 角田光代さんが落ちぶれる前のJは絶対的に イエモンの吉井和哉だったって仰っていたのがツボでした♪ Jが落ちぶれたのは、女関係に躓いたからでも運が無かったからでもないのだわね。 ただ才能が足りなかっただけ。きっとただそれだけ。
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