気ままな日記
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2002年03月12日(火) 山本文緒著「群青の夜の羽毛布」

さとるの母親の、策略とも思える娘への介入に対し、怒りをかろうじて抑えながら読んだ。
母から逃れたがっているのに、母の後押しがないと幸せになれない、逆らうと恐ろしいことになるのではという呪縛。
どこにいても見張られ監視されているように感じる恐怖、音への緊張感が、胸にグサグサと伝わってきた。
自分の怒りを隠すために、誰に対してもニコニコしてしまい、そして退屈な人と思われ、他人は去って行ってしまう。

さとるの母は娘に嫉妬していた。
私の母は私の何に嫉妬をしているのだろう。
パパッ子だった私に対して?
それとも家業を手伝う必要もなく、何でも好きなものを買ってもらえ、のほほんとしていられる一人っ子の”いい身分”な私に対して?
夕方になると、早く帰らなくてはと気持ちがざわつき、セカセカしてしまう自分。心の中に自分で門限を作ってしまう自分。
その正体がわかった。

さとるは、母親の期待に添えず仕事を持てなかった。
だからそのことに異常なまでにうしろめたさを感じている。
そして私は、
「あんたなんか世の中で通用できるわけがないんだから、若いだけがとりえのうちに結婚しなさい。」という言葉にとらわれた。
そうだ。私は若くない。世の中で通用しない。そして、最後の逃げ場所だった主婦にもなれなかった。
私の自尊心はそこで崩れ、母の予言は当たったのだ。

私はあなたのお人形ではない。
ペットが欲しかったのなら、子供など産まずにペットを飼ったらよかったではないか。
お人形が欲しいのなら、お得意のその手芸の腕で、何百個でも人形を作り、ずっとあなたの方を向かせて置いておけばよかったではないか。
くそばばあと叫びながら母親を殴り蹴飛ばすさとると一緒になって、私も心の中で母を殴った。
何度も何度も・・・。


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