‖ねこねこ仔猫日記‖
2002年11月27日(水)
◇リップスティック
ちょっと思いついたドリームを書こうかと。
相手は……んー。不二で良いか。(良いか!?)

んでは始まり。





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冷たい風邪が頬を撫でる。
秋から冬に変わるこの季節。


隣に座る友人がポケットを探って、とりだしたモノは……












リップスティック










人前で塗るのはマナー違反かなと笑って、彼女は細いスティックを伸ばして、その先端を唇にそっと押しつけた。
その様子は同性でありながら、ちょっと胸がドキッとした。

「リップ、嫌いだって言ってなかった?」
「あ……うん。でもさ。諸事情で。今でもあんまり好きじゃないよ。」

理由をはっきりと言わないのはきっと「彼」のためだからだ。
彼とキスをする時に唇が荒れていないようにと、気を付けているのだろう。
そんな彼女が羨ましい。
そして、彼女が幸せそうで嬉しい。

私にも彼女のように、キスをするために唇を気にするというような日が来るのだろうか。
少なくとも今の恋ではそれは叶わない。
私が片思いをしているあの人は、この学校で一番人気のある人なのだから。









そう感じた次の日。
私は教室でじっと白紙のノートを見つめていた。
彼女は「彼」と2人で帰ってしまった。
私はといえば、家に帰ってもすることもないからと何をするでもなくノートを開いてぼぉっと過ごしていた。

「あれ。まだいたんだ?」

すぐ近くからの声に私は驚き、振り返り損ねて椅子から落ちそうになった。
それを支えたのは声の主の細い腕。

「そんなに驚かなくても。」

ニッコリと笑う。

「あ、ありがと。」

彼の手を借りて、椅子に座り直す。
胸の高鳴りが今頃になって轟きだす。
彼こそが私の想い人、同じクラスの不二周助その人なのだ。

「もう、外も暗いし。一緒に帰ろうか。」
「え……?」
「そうしよう。さ、帰ろう帰ろう。」

答える間も彼は私に与えずに、彼は私の帰り支度をせかした。
帰る準備は整ったが、それでも心の準備が出来ていない。

「ほら。早く。」

彼が少々強引に私の手首をつかんで引っ張った。





コロン。





教室のつやつやとした木の板の上に落ちたのはリップスティック。
私のものではない。
と、すると。

「あ、っと。」

拾い上げたのは彼。
私がその様子をじっと見ていると彼が私を振り向いた。

「男がリップクリームってやっぱり変かな。」
「うぅん。そんなことないと思う。」

そうだ。男性用のリップだって売っているのだから可笑しくなんか無い。
私が考えていたのは、彼が唇を気にするような女性がいるんじゃないかってこと。

「そうかな。」
「うん。」

そう考えると少し哀しくなった。
ぐっと顎を引いて涙が出ないようにと歯を食いしばる。
泣くな。いると決まったわけじゃない。

「……どうかした?」
「な、なんでもない!!」

ぱっと顔を上げると目の前には彼の顔。
じっと私の顔を見つめている。

「……あ。」
「え?」
「唇、荒れてるよ。切れて、血が出てる。」

カッと恥ずかしさで顔が熱くなる。
な、なななななんで、こんな時に!
見られたくない。とっさにそう思って、唇を手で隠して彼に背を向けた。
が、すぐに元の方向へと戻される。
彼の細い腕のどこにそんな力があるのだろう。
しかも先程よりも彼との距離が縮まっている。
まさに目の前に彼の顔。
さらには彼の手は私の頬に添えられ、私がうつむくことを阻止している。

「じっとしてて。」

そう言われても。
恥ずかしさのあまりぐっと力一杯に瞳を閉じる。
何かが、私の唇に触れた。
驚いて瞳を開けると、先程の彼のリップスティックが私の唇に触れている。

「ダメだよ。気を付けないと。」

塗り終えると彼は私の頬から手を離し、リップスティックのキャップを閉めた。
ちょ。ちょっとまって?
私の唇に塗られたリップは彼の物よね?
沸騰したやかんのように
私の顔がさらに熱くなる。
ちょっと。ほんと?間接キス……。

「あ。それからね。」

私が1人で混乱している間に彼は話を続ける。

「唇が荒れない秘密の方法、教えてあげるよ。」

ぐっと私の腰が彼に引き寄せられた。

「ふ、不二く……。」

言葉は彼によって防がれた。
彼の綺麗な唇によって。

「ね。いい方法でしょ?」

私は呆然と彼を見る。

「これから毎日してあげるから。」

ニッコリと彼が私に微笑みかけた。






その彼との帰り道。
私は1本のリップスティックを買った。

彼と、キスをするために。














Postscript
なんだかなんだかねー。
マイペースな不二さんでした。
しかも矛盾が発生中。
いいや。もう。
↑投票ボタンです。(押すとコメントが変わります。)
塗っている人(作業中)見ると女の色気を感じます。
いいよねー。

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