呼吸が止められてしまったときの、血がにじむような息苦しさ
月に数回、やってくる
「そうやって、なんにも、なんにも無くなるんだ」
声で追い打ちをかけられる
「私は一人で生きているわけではない」
「この年まで生きてこられてよかったじゃない」
「今日一日さぼったからでしょ」
「飛蚊症(ひぶんしょう)のように変えられないもの」
そういう一時しのぎで抑えられないのは、月に2,3度
「何もかも、なくなるんだ。地位も、文章も、金も、家族も何もかも」
「どうしてみんな気が狂わないんだろう。そもそも気が狂わないって何だろう」
今月初めで出た飛蚊症は、この世界を正常に見ることへの疑念を、秒ごと、分毎に教えてくれる
この世界を正常に見ていること、狂ってみていること、その違いはあるのだろうか
そこを決定する物理的世界、その物理的世界が私を「何もなくなるんだ」というささやきの源なのである
天国、浄土、天上、せめて、地獄に行けると幻想をつかめればいいのだが