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2004年06月19日(土) コンクールの本当の問題点

ピアノを熱心にされている方の中には、コンクールに挑戦されている方も、多くいらっしゃることでしょう。
これだけ、コンクールが花盛りなのですから…。

しかし、それらの多くは、『学習目的のコンクール』であって、そこでの成果が直接、プロの音楽家へ登竜門になるわけではありません。
それぞれのコンクールによって成り立ちは様々ですが、日頃、一生懸命に勉強しているお子さんや応援しているご家族の励みになるように…というのが、主な目的と言っていいと思います。

実際、ある程度、弾ける様になった段階でコンクールに出ることで、本人のみならず、ご家族のサポートする意識が高まるのは事実ですし、それが良い方向に向けば、ピアノの上達には多いに役立つものです。
また、日頃弾かないレパートリーに挑戦したり、一曲を長く深く勉強することで、新たな成長のチャンスとすることも出来るでしょう。

ところが一方で、親御さんが熱心になりすぎて、お子さんの負担になったり、せっかく勉強したことが評価されない…と感じて、自信をなくしてしまうケースもあります。
また、コンクールの曲ばかりを一生懸命にやりすぎて、基本的な勉強がおろそかになり、結局、遠回りをしてしまう、また、生徒さんや保護者ご自身は、遠回りをしていることに気付いていない…という場合もあり、コンクールを利用する難しさを感じさせられます。

けれども、コンクールの一番の問題点は、これらとは別のところにあるように思うのです。
それは、コンクールに依存してしまうと、『他人に評価される事でしか音楽を楽しめない』…という傾向があるのではないか…という事。
この“他人”とは、必ずしも、コンクールの審査員とは限りません。
コンクールのために、熱心に指導する先生だったり、その指導に応えるべく、ご自宅での練習に付き添うお母様だったり、コンクールを受けるために特別指導をしてくださる、偉い先生だったりするのです。
そういう大人に囲まれて、言われた通りに弾けると誉められ、違うと注意される…という事を繰り返しているうちに、お子さん自身が、楽曲のなかに美しさや楽しさ、面白さを見出して弾く喜び…というのが、順調に育っていきにくいのではないか…という気がします。
音楽は、演奏者が、曲の中に音楽的な喜びを見出して、はじめて、聴く人に伝え、共に分かち合うことができるものです。
そういった面から考えると、コンクールのために勉強することは、長い目で見て、そのお子さんが音楽と付き合っていく上で、プラスには働かないかも知れません。

音楽を感じる心の芽ばえは、ごく幼い頃にはじまります。
コンクールのように、他人からの評価を前提とするものは、せっかく芽ばえかけた音楽を感じる心が、育っていくのを邪魔してしまうのかも知れません。

現実問題として、音楽の本来のあり方とコンクールというのは、学習者レベルに限らず、相容れないような気もします。
このことについて上手に書く自信がないので、止めますが…。

ピアノ指導者が、生徒さんに、ピアノを弾くことで何をもたらしたいか…によって、コンクールへのスタンスは、変わってくるものだと思いますが、コンクールが人の心に及ぼす影響…というのは、常に、考えるべきだと思います。
また、こういった問題は、指導者だけでなく、保護者の方にも考えていただきたく思います。
コンクールで結果を出すことと、音楽の本質的な問題は、全く別のところにある…というのを知らずにいると、せっかくお子さんの中に育った音楽の芽を、枯らしてしまうことにもなりかねません…。


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