ぼくたちは世界から忘れ去られているんだ |
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2002年04月04日(木) | lunch and knife ルンチとクニフェ |
日記を書くっていうのは、いいことだね。あぁ、わるくない。 ことばなんてほとんどしらない無学なわたしはにやにやと笑いながら今日も自分の欠片を唇のはしから指の先から垂れ流す。 それはやがてみずたまりとなりわたしを動けなくさせる。 ヘドロの匂いのなかでわたしは幸福にわらう 橙色の芋虫の中でわたしは急いでいる。 Kとの約束におくれている。早くしなければ。けれどいくらわたしがあせろうと芋虫は一定のスピードでごとごとごとごと線路の上を進む。あせりをけそうと本を開きヘッドホンはいつでも標準装備、暇つぶし体制に入る。昨日読んだ本を、また読む。帰りに本を二三冊買おうと思う。 と、ごとり、という振動がわたしの内臓を震わせる。車掌からの放送を待つ。音楽は一時停止。 JR関係者特有の鼻詰まり声で面倒くさそうに車掌が言った。 「えー、ただいま、代々木駅の線路にて、お客様が線路に御降りになられましたため、中央線、総武線ともに止まっております。お急ぎの所申し訳ございません。今しばらくお待ちください」 うしろにで、お客様、お客さま、という声が聞こえる。代々木からの無線か何かだろう。ざわざわのなかで、唯一聞き取れる、お客様、という声。いらだった叫び。いらいらとざわざわが雑じりあって、じわじわとわたしを責める。約束の時間はとうにすぎていった。 線路になんか、落ちるなよ。落ちたくて落ちたんだろうけどさ、でも、迷惑だよ。 見知らぬ「お客様」を心の中で罵った。お客様と、あいつがわたしの中で、共鳴、シンクロする。思い出したくもない、けれどわたしに絶えず絡まり付くあいつ。やめて、と、誰にわたしは言えばいい?あいつ、「お客様」、それとも、誰? 走ってKのもとに行く。今日は塾でテスト。まったくくだらない。だけれどこれを受けなければ塾に通うことはできない。横暴だ、だけれども、正論だ。 わたしは試験会場に遅れて着き、遅れて問題を解き、時間内に解き終わった。 「意外に簡単だったね」 Kがかわいらしい唇を快活に動かしていった。そうだ。簡単だった。 「C先生、いたね」 C先生というのは数学科の偉い先生らしい。説明会のときに相談に乗ってもらい、わたしとKはC先生を随分と気にいっている。爽やか、朗らか、優しい。 「てゆーか、質問ありますかって、あれだけのためにきたのかなぁ」 そうじゃん、とわたしが言うと、Kが笑いながら 「五分前にこられても、って感じだよね」 と言った。わたしもあわせて、ねー、という。 新宿駅西口でJRと地下鉄で、二人別れる。 「じゃーね」 じゃぁね、また、なんていいながらわたしはまたオレンジの蛇のような電車に乗り込む。 Kはなんていい奴なんだろう、だけど、わたしは、どうなんだろう。 電車は嫌いだ。でも電車に乗らなければどこにもいけない。ヘッドホンがないと、中途半端な静寂がわたしのお腹の中を捏ね繰り回す。粘土のようにわたしはなって、溶けていく。その上を俯いた、朝から疲れた顔をした人たちが歩き回る。 すぐに降りる。 本屋によって、文庫を二冊買う。これで明日まで持つかな、なんて考えているわたしは孤独だ。しかし欲が孤独を凌駕する。 次に乗った電車はすいていて、わたしは本を読んだ。 読みながら時折、流れていく景色を眺めた。展望台なんかに行って、遠くまで広がる海だとか、泥の中にビーズをまぶしたような摩天楼を眺めるより、ずっと、心が休まる。 今日の昼食はサンドウィッチだった。わたしはナイフで切って食べた。 ナイフ、knife。ケーエヌアイエフイー。クニフェ。orangeは、オランゲだ。lunchはルンチだ。 英語なんて話せるようにはならないだろう。 話せたら、いいな、とは思うのだけれど。 だけれどわたしはきっと、相手が日本人だろうと米国人であろうと、あるいは世界ウルルン滞在記などに出てくるような人々であろうと、本当に、好きになることなんて、できないんだろう。 |
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