ぼくたちは世界から忘れ去られているんだ

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2002年04月03日(水) 日記のサイトなんですか、だって。えぇ、そうですよ
 橙色の電車の中で小説本を読んでいた。
 小説の中で世界は壊れてゆく。
 二つめの駅でオレンジの虫の中からわたしは脱出し、長いエスカレータで地中深くへともぐりこんだ。
 前には、金髪の頭。毟り取ってやろうか。蹴飛ばして、ドミノ倒しにしてやろうか。
 ヘッドホンの中で声の良くとおる女が暴力的で純粋な愛と欲望の歌を歌っている。わたしは聞きほれる。
 地下鉄。立ちっぱなし。隣の斑の髪の女、まるで人間ではない。その目、その唇、それはいったい何のものだろう。わたしは本を開く。
 隣の女、わたしの本を覗き見ると顔をそむける。
 この本は、いけないんだろうか。読んでると恥ずかしい本なのかしら。
 かしら、だって。バカみたい。心の中で演劇部のバカどものようにつぶやく。
 ヘッドホンの中の女、美しい声で、そう、バカかしら、と囁く。
 不安になり、巻き戻す。けれどそこに在るのは女のファルセットの苦痛そうな叫び。
 席が空く、なんとなく座る。隣のスモッグ色のスーツを着た中年男が寝息を立てている。すぅ、すぅ、すぅ、ふぅ、ひゅぅ、すぅ、すぅ、すぅ、しゅぅ、しょぅ。
 まるで動物が鳴くみたいだ。わたしは怖くなって席を立った。
 いつもの駅、降りてマンションへ。
 誰もいない夜の道。ヘッドホンの声にあわせてわたしはうたった。まるで変質者。しかし怒涛のような快感が。うぅー、とヘッドホンの中でうめくように歌えば、うぅー、と私も繰り返す。
 いかにも、といった金髪の男とすれ違った。
 私を見ると金髪は、テレビの夕方のニュースでたまに特集が組まれる多重人格者を見るような目でわたしを見た。
 わたしは速く歩いた。
 裸の街路樹にキックをする。
 名前を付けてあげよう。そうだ、あのこはサリーだ。
 サリーはもう死んじゃったの、と、心の中でつぶやく。
 今度は声に出す。
 俯いて上目遣いで外国映画のこ憎たらしい子役のような眼つきで、サリーはもう死んじゃったの、と、いいながらマンションに入り、一回にある我家までダッシュでむかった。


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