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沙夜



 指環

「ね、私、リングが欲しい」

「リング?」

「そう、リング、指環!
プラチナ……とは言わないけど、ホワイトゴールドの。
シンプルで、ピンク色の石か、ダイヤがついているのがいい」

「それは……謝罪のリングとか?」

「ううん。
誠意のリング。愛情のリングよ(笑)
まぁ、お詫びのリングでもなんでもいいんだけど」

「誠意?
愛情、ね……」

「だから、豆ぞうさんが選んで、プレゼントして欲しいの。
おまかせするわ」

そんな会話をしたのが、旅行の2日前。


きっと、『なんで買わなくちゃいけないんだよっ』と、
思ったに違いないけど、彼は何も言わなかった。





旅行の翌日。
こちらでの仕事が終わったら、そのまま帰るつもりだった彼に、
私は「デートしたい」とわがままを言った。
少しだけでも会いたかった。






お茶するかな。
もっとゆっくり出来るのかな。
……それとも、バイバイかしら。

ランチの後、私は助手席でそんなことをぼんやり考えていた。

「指環、見に行こうか」

「え。……いいの?」

この時、指環のことは、全然考えていなかったので驚いた。


2店舗をハシゴして、あれこれ指にはめてみた。
最終的には、私が最初に良いと思ったものに彼も同意して、
それをプレゼントしてもらうことになった。






結局。
こんなことをしてもらっても、彼にしてみたら何の意味もないのだろう。
彼女が欲しいと言ったから、買ってあげた。
指環には、謝罪だの、愛情だの、何の意味合いも込められてはいない。

無理を言ってしまって悪かったと思う反面、
無理を聞いてくれたことが嬉しくもあった。

でも、こんなことで愛情の度合いなんて量れるわけじゃないし、
愛情を縛り付けておくことも出来っこない。

それでも、今の私には意味があり、なにかカタチあるものが必要だった。




2006年07月24日(月)
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