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2006年05月02日(火) |
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一人の昼と二人以上の夜 |
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本牧からベイブリッジに乗り大黒を目指す。 吹き抜ける風に車体が軽く流される。
細波がキラキラと輝く海の向こうに京浜工業地帯の灰色が広がる。 案外いいコントラストだ。
工場や煙突や鉄塔だって何十年もそこに在れば景色に馴染む。
煙突から吹き上がる水蒸気が晴天の空に雲を浮かべるための作業に思えるほど空気が蒼い。
これは、と思った。 春のぼやけた風景じゃなく夏の風景だ、と。
ヘルメットの中で口をすぼめる。
無条件で気持ちのいい日だ。
ゴールデンウィーク前の一瞬の静寂だろう。 大黒の海釣り公園にはほとんど人がいなかった。 僅かに数組のカップルが思い思いの場所で海を眺めていた。 僕は海から少し離れたベンチに座り買ったばかりのヴィッテルのキャップをひねる。 喉をひんやりとした水が流れ落ちる。
ふぅと安楽の声が口をつく。
中型犬を連れた初老の男が軽く会釈して僕の前を通りすぎる。
視界には広々と蒼が広がる。
時間はあっという間に流れる。 行きかう貨物船の船員の数を想像したり、遠くの雲を動物に見立てたりしてると特にだ。
気づけば二時間もぼっとしていた。
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