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2006年05月07日(日) |
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恋愛ロジック |
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駅前のスターバックス。 待ち合わせに現れた女は知らない女だった。
大きく波打つ漆黒の髪。 資生堂のモデルみたいなメイク。 カバンも上着もクロエ。 そして膝丈のスカート。
湘南のローカル駅じゃなかなか見かけないタイプだ。
女は初めにテラス席を見回し、その後店内にいる僕をガラス越しに見つけた。 綻んだ口元には見覚えがある。
「そうだった。タバコ、辞めたんだよね。」 声も、だ。
「三年振りだね。久しぶり。」 女は僕の目をのぞき込み確かめるようにそう言った。
二人して海岸を歩く。
「ヒールが傷だらけになるよ?」 「いいの。別に。」
女はミュールを脱ぎ左手にぶら下げた。
「歩くときは左側がいいな。」 「そうだったね。」
鳶が大きく旋回する。 一瞬の凪。
「サーフィン、久々にしたいなぁ。」 「すりゃいいじゃん。」
女は僕の顔をのぞき込み首を傾げる。
「ボストンで?」 「ボストンで。」
女は目を細めて笑った。
その笑顔。 それは憶えてる。
その笑顔が好きだった。
季節がどんなに移ろおうと。 二人の時間がどんなに隔たろうと。
ひまわりみたいなその笑顔は忘れない。
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