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2006年05月10日(水) |
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Sweet Candy |
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「これ、キレイね。」 ダイニングから女の声がする。 額まで引っ張ったタオルケット越しに聴こえる。
「キャンディ?」 近づく女の声。 続いてソファに腰掛ける音。
「なんかキレイすぎて身体に悪そう。」 瓶を振る音。
「固いわ。」 蓋を開ける音。
僕はベッドから上半身を起こした。 裸にシーツを巻きつけたままソファに座っている女を眺める。
人指し指と親指の間にはルビーのような赤いキャンディ。 カーテンから差し込む光に透かしながら女が言う。 「甘いもの好きだっけ?」
僕は小さな欠伸をかみ殺しながら答える。 「ホワイトディに渡しそびれた。」
女は小さく笑う。 「私に?」
僕もつられて笑う。 「いや、違う。」
女は悪戯な目をさらに細め僕の表情をうかがう。 口から白い歯が零れる。
キャンディは女の口に消えた。
「怒った?」 女が言う。
「いや、別に。」 僕は答える。
怒るのはむしろ君の方だ。 そのキャンディはもう3年もそこにあるんだ。 これは口に出さない。
女はソファーから立ち上がりベッドに近づく。 僕の頬を両手で包み、唇を近づける。
唇が触れる瞬間、女の口の奥から。 がりっ、とキャンディの砕ける音がした。
重ねた女の唇は甘く、その甘さに胸が疼く。
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