lucky seventh
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「美味しいよ」 彼女はミルクティーのはいったカップをかかげ、微笑んだ。
何もかもが終わりなんだ。 ふと、ソレを目の前にして思った。 茶色のまだらな神は風になびいて、太陽の光は 視界にはいってくる。 真っ白な景色はもう思い出せない。 過ぎ去った思い出だけが綺麗に脚色されて、 今の風景は色褪せていった。
「愚かだね」
何の躊躇いもなく、その言葉だけがただ零れてきた。 けれど、色も思いもこめていない言葉はただ無機質に 意味を成さぬまま大気に流れては消えた。
「..............」
馬鹿げていた。 ここに存在しること事体が不可思議で白昼夢のようだった。
「愚かなんだ.....でも」
ただ目の前にあるソレを見て、私は動揺していたんだろう。 乾いた口が水気をもとめるようにペキペキと音をたてた。 ふいにどれくらいの時間こうしていたのか気になって見上げた。 見上げると日時計が影を落としていて、まるでそこだけ 時間の流れがゆるやかであるように感じられた。 きっと目の前には彼女がいるんだろう。 少しだけ唇のはしを持ち上げて、口を開いた。
「私が一番愚かだったのかな?」
笑い声が聞こえた気がした。
「君は知っていたの?」
その、笑い声に懐かしさを覚えて
「君は本当に馬鹿だね」
返らないと知っていながら、私は話し続けた。 ただそこにはソレがあったから、ただそこには変わらずに 彼女の空気が流れていたから、気の所為だと知っていても 話し掛けずにはいられなかった。
「でも、一番馬鹿なのは私だね」
「美味しいよ」 あの時彼女はミルクティーのはいったカップをかかげ、微笑んだ。 「美味しいね」 私はその時それに笑って言葉を返した。
ナナナ
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