lucky seventh
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2004年02月18日(水) 鮮やかな死色、触れられた死線

いらないと言えば、あなたは怒りますか?
笑いますか?




突然の来訪にぼくは笑った。
この白い部屋に、彼がぼくを尋ねてくることなんて、
よほどのことが無い限りありえなかったから、

「久し振りだね」

部屋の真ん中に無造作におかれた机の横で、
ぼくは地べたに座りながら、片手をあげヨッとあげて言った。
彼はそんなぼくの様子に呆れたように見て、苦笑した。

「おいおい、なんだよこの白い紙切れのヤマはよぉ?
しかも、なんだよこの部屋は?ってか部屋の中に空作ってんじゃねぇよ」

天上だけ白からやけに青く塗り替えられた部屋。
実はなんとなく昨日の夜から1人でぺたぺた、ぺたぺた塗ってみたり、
おかげで完璧徹夜の睡眠不足、さりげにシンナー匂い。

「まぁ、それはいい。
ん、これは土産だ」

ずいっと差しだれた箱は有名なケーキ屋さんのロゴがすてきに
プリントされていた。
口が悪いがみょうに礼儀正しのが彼の売りらしい。
(いや、勝手にぼくがそう思っているだけなんだけどもね。)
そして、細かいことにはままりこだわらないのがモットー。

「お茶でもいれましょうかね?」

いそいそと箱を片手に、ぼくはすぐとなりのキッチンに行った。
ダイニングキッチンという構造をしているらしい、とても便利だ。




いらないと言えない、自分の弱さに絶望しました。




食器棚から少しだけヒビのはいった彼のカップを取り出す、
あぁ、そう言えばまだ聞いていなかった。

「なに飲みますかね?」

キッチンからダイニングに向けてあるカウンターから彼に言った。
彼は窓の外を見ていた。
ぼくが天上に塗りたくった色が、部屋からはみでで、
天上を支える壁の四方の一面が、ガラスばりであるでかい窓から見える
色と溶けていた。

「なんでもいい」

彼は呆れたようにぼくに言った。
いつものことながら滅茶苦茶なぼくの家にまだなれていないのだろう。

「午後ティーでもいいっすかね?」
「あぁ」

彼の返事に、ごそごそ冷蔵庫をあさるとこの前買い出しした
午後ティーが出てきた。
もちろんストレート、ミルク、レモンのなんでもござれ。
私的にはリプトンのが好きだったけど、あいにくそれはセール対象外
だったので断念。とても残念だ。
ピーチとか、アップルとか甘くて美味しいのでよくお菓子がわりに
飲んだりしていた。




いらないと言える、自分の非情さを呪いました。




「なぁ、お前いつまでいるんだ?」

カップと、彼から頂いたケーキを机にのせると彼は言った。
何所に?とかそう言った主語を思いっきり無視して、

「なぁ、お前はいつまであるんだ?」

冷蔵庫で冷やされた午後ティー(ストレート)はひんやりとしていて、
作り物みたいなアカと白のケーキは道化のようでまるでぼくみたいで、
何所に?とかそう言った主語を思いっきり無視して、

「そのままじゃねぇかよ」

彼は言った。

「ちっとも変わりゃぁしねぇ」

どうでもいいように、
どうでもよくないように、

「お前は誰なんだ」

確かめるように、確認するように、
認めるように、認識するように、識るように、

「お前はお前じゃねぇのか?」

その優しさが、
その強さが、
その射るような視線が

この優しさのない、
この弱さが、
この射られたような身体が、





どうしようもない優しさが振り包み
どうしようもないぼくを甘やかす、



「相変わらずですね、潤さん」

ぼくは彼に向って、久し振りに微笑んだ。

「ばぁか」

笑って彼にぼくの額をこづかれた。






あぁ、また天上を塗り替えなくっちゃ、
彼に包まれるような赤に、深紅の死色に染めて、
どうかこの青を、越えてしまった死線のような色を塗りつぶして。

心の奥で、嬉しくて泣いた。


ナナナ

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