lucky seventh
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2004年03月05日(金) |
魔法使いは恋におちる |
黒衣の魔法使いネロ
その名を冠とするとおり、彼のずべては闇のベール包まれていた。
=魔法使いは恋におちる=
「ミレニアム!」
黒髪のスタイリッシュショートの少女が、階上にいる少女の名を 叫んだ。
「はやく、はやく!遅刻するよ!!」
その声に急かされるように、黒髪のセミロングの少女が降りてくる。 ミレニアムと呼ばれた少女の顔だちは幼かった、しかしその顔はまるで 夜の帳のような、年不相応な不思議な落ち着いた雰囲気を醸し出していた。
「ごめんなさい、トリニティ姉さん!!」
一方、トリニティと呼ばれた少女はミレニアムとは対照的に 朝日のような鋭く、温かな輝きを放っていた。 2人は姉妹である。 姉のトリニティ、そして今はここにはいないが彼女の双子の片割れと 妹のミレニアムの三姉妹なのだった。
この日、双子の姉たちの大学は休みだった。 毎朝スクールバスで学校に通うミレニアムに、トリニティは久し振りに 愛車で学校に送ると言ってくれた。 それは、カリキュラムやバイトで忙しく、あまり妹をかまってやれない 姉なりの心遣いであったのだろう。 少しでも、時間をとれれば妹のためにという思いがあった。
「いってきます」
ミレニアムはすでに出かけたもう1人の姉の作ったお弁当をかかえ、 姉の待つガレージに向った。 案の定トリニティはすでに愛車の運転席に乗って、妹を待っていた。 急いで、ミレニアムは定位置の後部座席に乗り込んだ。
「忘れ物ない?」
トリニティの言葉にミレニアムは頷くだけで答えた。 急いで準備をしていたせいで息も絶え絶えで声が出ないのだ。
「珍しいね、ミレニアムが朝からこんなにドタバタするの。」 何かあったの?
車を出しながら、器用にトリニティはミラー越しにミレニアムを見た。 それに対して、ミレニアムは少し困ったようにトリニティを見返す。 まるで、なんといっていいか分からないかのような仕種で、 トリニティは眉をしかめた。 流れる馴染みの風景が遅く感じられる。 その違和感に、少しだけミレニアムの今朝の理由に何か触れたカンジがした。
(落ち着かない…)
手持ちぶたさに相成って自然に手がパイポに伸びていた。 それはトリニティの癖で、よく考え事や何かを待つ時にする動作だった。 その間、数分間の間車内はずっと無言だった。
「……変なカンジするの」
ミレニアムは目を閉じて、言った。 それはどこか、自分の中から言葉を探してつなぎ合わせたような 不自然さがあった。
「それは厄介ごとかい?」
信号で停止しながら、トリニティは前を向いたまま聞いた。 ミレニアムはううん。と、目を閉じたまま首を横に振った。 その顔を思案に染まっている。
「漠然とした始まり」 それしか分からないと。
そう言うとミレニアムは閉じていた目を開いた。
「きっと、何かがかわる。 それが良いことか、悪いことかはぜんぜん分からないケド」 もう、戻れないの。
ミレニアムはぽつりと、だけどはっきりと言った。
「もう、元には戻れない。」 だから、覚悟が必要だよ。
車は何時の間にか、ミレニアムの学校前に着いていた。 トリニティはハンドルの上に力なく、顎をのせた。 ミレニアムの言葉を考えているのだろう。 理解しようというそう言う素振りだった。
「わかった」
ほんの少し時間そうした後、トリニティは頷いた。
「心に刻んでおく」
姉のその答えに、ミレニアムはほんの少し微笑んで、 ドアを開いた。
「いってきます」
「いってらっしゃい」
それは、まさに始まりだった。
ナナナ
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