lucky seventh
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母なる海の紋章
闇のながした涙でできた紋章は、
時代とともに名を代え、姿を変えて
時には聖なる泉の紋章として、
時には荒ぶるの滝の紋章として、
時には大いなる河の紋章として、
受け継がれることなくひっそりと歴史に存在を残した。
〜・涙の海・〜
「大河の一滴」
少女の声とともに、どこからともなく現れた濁流がすべてを呑み込んだ。 それはまるで少女の世界に伝わる古の書物に記された大津波にに似ていて、 少女は我知らず身震いした。
衣服包まれた己の身体の胸元には、この世界の創世に関わる闇の流した たくさんの涙によってできた希有な紋章が刻まれている。 それがこの大津波を引き起こしたのだと、少女はそれが分かった。
だが、少女はまだ知らない。 何故、自分がここにおいるのか? 何故、自分がこの紋章を宿しているのか?
そしてこれから自分が運命の一部に組み込まれたことを、少女は知る。
最近毎晩のように夢を見る。 サイレント映画のように繰り返し繰り返しフィルムのように流れる場面に、 私はいつもなすすべもなく眺めていた。
それはボロボロになって何かから逃げている少年だったり
それは手を胸元にあて握りしめながら泣き崩れる少年だったり
それは… 美しい翠の風をどこかの塔の上でまとう少年、 飢えたような金銀妖眼を持つ美しい金糸の髪の青年…、 フィルムを取り替えるように切り替わる膨大な映像に私は目眩がした。
(これは一体なんなのだろう?)
私は夢を夢と知覚しながら、それでもこの異様な状態に首を傾げざる おえなかった。 普通の人間ならばこのように毎回同じ夢を見続けるのだろうか? 夢の内容は何度見ても変わらない。 多少は背景や場面が変わったりするが、その中に必ずと言っていいほど 同じ登場人物達が出てくるのだ。 出てくる頻度が多いのは、 ベージュっぽい茶色の髪に、どことなく大人っぽい少年 黒い髪が綺麗で、どこか妖艶な少年 それと、金茶の髪に精巧な造型のような顔にはめたような翠の瞳の少年 そろいも揃ってめったに拝めないような美形の人々の面々で、 だけど、その顔には何か重いものを背負っているのを漠然と私は感じた。
「美しい人、あなたにそんな表情は似合わない。」
ちょっとカッコをつけながら、相手に聞こえないと分かっていても ついつい私は呟いてしまった。 このふざけた台詞は私の処世術。 真面目じゃなくて、ほんの少しの冗談を含めたこの物言いが 相手と自分の距離を推し量る上で一番いいものなんだと私は思った。 人によってはお節介なのかもしれないが。
「笑顔を見せて…」
ナナナ
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