さくら猫&光にゃん氏の『にゃん氏物語』
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2002年12月06日(金) |
にゃん氏物語 夕顔12 |
光にゃん氏訳 源氏物語 夕顔12
滝口を呼んで『ここに 急に何かに襲われて苦しんでいる人がいて 苦しんでいるから すぐ惟光朝臣の泊まってる家に行き 早く来るよう 誰かに言わせなさい 兄の阿闍梨が来ていたら一緒に来させなさい 母の尼君が聞いて気にするといけないから 大げさに言わないように あの方は私の おしのびの行動をやかましく言い止めさせる人だ』 こんなふうに順序よく用件を言いながら 胸は詰まり 恋人を死なせる 悲しさがたまらないと同時に 辺りの不気味さがひしひしと感じられる
もう夜中過ぎらしい 風が以前より強く 鳴る松の枝の音は ここが 大木の中に囲まれた寂しく古い院である事を思い出させ ちょっと 変わった鳥がかれた声で鳴くのを フクロウは この鳥かと思われた
考えてみると どこからも離れていて人声もしない こんな寂しい所に 何故 自分は泊まりに来たかと 源氏は後悔の念でいっぱいであった 右近は夢中で夕顔の側にいて 震えて死んでしまうように思われた それも心配で源氏は一所懸命に右近を取り押さえていた 一人は死 もう一人は正気でない 自分一人だけ普通なのが源氏には堪らない
灯火は ほのかに瞬き 中央の室の仕切りに立てた屏風の上や 室の中の隅々など暗い所へ 後ろから ひしひしと足音をさせて何か 忍び寄ってくる気がしてならない 惟光が早く来てくれないかとばかり 源氏は思った
彼は泊まり歩く家が多い人なので 使いがあちこち探しているうちに 夜が少しずつ明けて来た 待っている時間は千夜にも相当するように 源氏には思えた
やっと 遥か彼方から鶏の鳴き声が聞えて ほっとした源氏は こんな 危険な目に何故自分はあうのだろう 自分の恋心から始まった事だが 恋愛について畏れ多い 想ってはいけない人を想った報いに こんな 後にも先にも例の無い 哀れな目にあうのだろう 隠していた事実は すぐに噂になる 陛下の お考えを始めとして 皆が何と批判するか 世間の嘲笑は自分に集まるだろう とうとう自分は このような事で 名誉を傷つけるのだと源氏は思っていた
さくら猫にゃん
今日のはどう?
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