さくら猫&光にゃん氏の『にゃん氏物語』
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2002年12月31日(火) にゃん氏物語 若紫15

光にゃん氏訳 源氏物語 若紫15

『気の毒に見舞いに行くべきだった なぜ教えてくれなかったの?
ちょっと 私がお見舞いに来たと言ってくれ』と源氏が言うので
従者一人を使いに行かせた 訪問が目的で来たと言ったので 惟光も
入って行く 「主人自身で見舞いに来ました」と言った
大納言家では驚いて「困りました ここ数日ずっと衰弱しているから
逢うのは無理でしょうが 断るのももったいない」と女房は言って
南向きの縁座敷を綺麗にして 源氏を迎えた

「むさ苦しい所ですが せめてもの厚意のお礼だけでもと思いまして
思いもよらぬことでしょうが こんな部屋に通して恐縮しています」
と家の者が挨拶した その通り 源氏は意外な所に来ている気がした
『いつもお見舞いをしたいと思っていしたが こちらでは私の願いを
突拍子もない事と扱うので遠慮し 病状が悪いと知りませんでした』

「病気なのはいつも変わらないですが いよいよという時に 勿体無い
お見舞いを受けながら喜びを自分で伝えられず 失礼を許してください
あの話を今後も忘れないでくれたら もう少し年頃になった時にお願い
したいです 一人になってしまうあの子への未練が 私の仏道への
道の妨げになるかと思います」

取り次ぎ人に言う尼君の言葉が 隣室から心細く絶え絶えに聞えてくる
「失礼をおかけしています せめて孫がお礼を言える年ならば…」
とも言う 源氏は哀れだと思って聞いていた
『今更そんな挨拶は無しですよ 浅はかな気持ちだったら 変人で
物好きと 見られるのも関わらず こんな話は続けません どんな宿縁
でしょうか 女王様をちらっと見かけた時からどうしても忘れられない
こんな気持ちは不思議で なぜかこの世だけの事とは思われない』

などと言って源氏はまた
『自分を理解してくれないので私は苦しんでいます あの小さな人が
何か一言 言ってくれるように頼みたいのですが』と言う
「それはそうですが 姫君は何も知らないで もう寝てしまって…」
女房がこのように言っている時に 向かうから隣室に来る足音がして
「おばあさま あの寺にいた源氏の君が来ているよ なぜ見ないの」
と女王が言うので女房たちは困った 「静かにしてね」と言っていた

「でも源氏の君を見たので病気が良くなったって言っていたから」
自分がいい事をいっていると思っている 源氏は面白いと思っていたが
女房たちが困っていて 気の毒で聞かない振りで 見舞いの言葉だけを
残して帰った 幼稚と言っていたが本当に子供だ だけどよく教育して
いけるだろうと源氏は思った

翌日も源氏は尼君へ丁寧な見舞いを書く 例の様に小さい手紙には

『いはけなき鶴の一声聞きしより葦間になづむ船ぞえならぬ』
かわいい鶴の一声を聞いてから葦の間を行き悩む船はただならぬ
思いで 恋焦がれています…いつまでも貴方だけを…
わざわざ子供にも読めるように書いた 源氏の手紙の字も見事だった


さくら猫にゃん 今日のはどう?

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