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雨。 - 2005年06月02日(木) 雨が降っている。 もうすぐ訪れる梅雨の気配を孕んだ雨。 昔から レインコートと雨靴が苦手だった。 それでも母は 私にそれらを身につけさせて 小学校へと送りだした。 真っ赤なレインコートだった。 友達の雨傘が 雨粒をはじいていた。 今では珍しいものではないけれど その当時の私には とても綺麗で興味深いものだった。 雨が傘の布に落ちると 雨粒はまるで 真珠みたいに丸くなり ころころと 傘の上を転がって弾け飛ぶ。 ぽん。 ころころ。 ころころ。 昔 割ってしまった水銀計の中の水銀が 床の上をころころと 弾きながら 転がってゆくのに とても似ていた。 私も一緒に こぼれた水銀を追い掛けようと 手を出した時に 母に酷く叱られた。 まだ とっても小さかった頃の話だ。 雨の日は 昔から 嫌いだった。 身体が雨で 湿り気を帯び 私の気持ちまで 憂鬱にさせた。 決まって梅雨の時期に私は 鬱に入り 自分の部屋の中で ひとりで過ごす事が多かった。 学校で三者懇談会があったときに 母は担任の先生に この頃 一人で閉じこもって 何を考えているのかわからない と 私の横で話した事を 覚えている。 それを とても不思議に感じた。 だって なんにも考えてなど いなかったから。 意識があるのかないのか わからない時間を ただ 過ごしていただけだった。 私は子供らしい子供では なかったのかも知れない。 あの日も雨が降っていた。 神戸の街角のカフェの2階。 窓からは 段々雨あしが強くなるのが見えている。 いつ来るのか わからない人を待ってた。 私は2回 係りの女性を呼んで 誰かを待っている人は 居ないかと尋ねた。 自分で確認するのが 恐かった。 1時間30分。 時間が経過すればするだけ 私は惨めになった。 私の為に靴を濡らす理由が もう 彼にはなかったからだろう。 私は席を立ち上がり 周りを見渡さないで 店をでた。 少しでも誤解できる余地を 残したかったのかもしれない。 雨は やっぱり今でも苦手だ。 緑の森に降る雨は とても素敵だけど コンクリートの街を包み込む雨は 私を窒息させる。 そして そんな街にも生活にも 私の靴を濡らす理由がみつからない。 だから 雨は嫌いだ。 ...
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