華のエレヂィ。〜elegy of various women 〜
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2003年01月15日(水)

年下の男の子。 〜激昂〜




<前号より続く>


クリムトの接吻にまつわる話で元気が出てきた真知子。


タイミングを見計らって、俺は言った。


 「どうだろう・・・まず彼だけでも追い返せばどうだ?」
「実は・・・私もそう言おうと思ったんだけど、強く言えない」

 「どうして?」
「下手に言うと何するか分からないから・・・」

 「奴は今、何しているの?」
「隣りの部屋で寝ているわ・・・だから今電話しているの」

 「俺から出て行くように言ってやろうか?」
「もういいじゃない、平良君と電話しているのに・・・」


やはり泰之の話題には触れたくない・・・真知子の疲れと苛立ちを感じた。

しかし真知子はこれをきっかけに、もう抑え切れないとばかりに、
泰之の先日の行動について次々と話し出した。



彼女の両親が、彼の居候について良い気持ちで居るはずが無い。

未来ある国立大学生の若者と、コブ付き出戻りの三十路過ぎの娘。

冷静に考えても、親なら釣り合わないと思うだろう。
真知子との将来についても、心配もしたのだろう。

彼女の両親がダイニングでお茶を飲みながら彼に話を切り出した所、
泰之は激昂して突如暴れ出したという。


感情に任せて何やら聞き取れない事を喚き散らす。
食器棚の扉を素手で殴り、板ガラスを打ち破る。
その中身をひっくり返し、辺りに投げつける。
ついに椅子を振り上げてテーブルに力一杯振り下ろした。

周辺に飛び散る破片や飛沫。
右手を血まみれにして仁王立ちする泰之。

おびえる真知子の両親を睨みつけ、次の行動を起こそうと動いた。

異変を察知した真知子が身を呈して止め、その場は済んだ。
その事件以来、彼女の両親は泰之に何ら意見を出来ないでいた。



泰之はどうしようもない幼児性の中に粗暴な面を持ち合わせている。

気に入らない事や自分の拙い我慢の限界を超えてしまうと、
自分でも制御が出来ず、力一杯に暴れて発散する。

今で言う「キレる」状態である。
当時はまだあまり使われる言葉ではなかった。


おそらく幼児期から厳しい家庭環境で抑え付けられていた反動なのだろう。
そんな泰之に、真知子も内心悩んでいた。

しかし彼に対しての愛情には何ら変化が無いという。

私がついていなければ、この人は本当にダメになる・・・
その一心で彼を支えていきたい気持ちを持っている。

それが例え自分の両親を危険な目に遭わせた男であっても。


女の持つ愛情とは、男から見れば本当に理解出来ない一面がある。


「やっぱり別れた方が良いよ・・・彼のためにもならないよ」
 「・・・嫌だ、出来ないよ・・・彼には私が・・・」

「それって彼じゃなくて、真知子自身のためじゃないの?」
 「どういう事よ?」


彼女の反発覚悟で、俺は今まで思っていた事を思い切って言った。


「本当は彼じゃなくて自分自身が寂しいだけじゃないの?」
 「・・・・・・」

「彼に全身で尽くしている、本当はそんな自分に酔っているんだろ?」
 「・・・あなたに、何も知らないあなたに何が分かるのよ?」


真知子の逆鱗に触れたのか、怒った口調で俺に食いついてくる。


「何も分からないよ、でも真知子は苦しんでるじゃん!」
 「・・・苦しんでなんかいないわ」

「絶対嘘だよ・・・俺も言い方が悪かったけど、真知子草臥れてるよ」
 「・・・分かったような事言わないで」

「ちょっと聞いて・・・そのままだとあなたのご両親も可哀想だよ」
 「・・・分かってるわよ、だから悩んでる」

「まずさ、両親のためにも彼に戻ってもらおうよ、それからでも・・・」
 「・・・・・・」


彼への忠実な愛情に隠れていた、真知子自身の甘え。


結婚の失敗。
まだ手のかかる娘。
これから手のかかる親の介護。
おまけに先日の中絶による心身のダメージ。


彼女だって心細く、寂しかったに違いない。
人生の試練の連続に、本当にいつも明るくて朗らかにいられる訳が無い。

孤独の中で自分自身に自問自答し、出口の無い迷路に苦しんでいた。


心の柱となっている泰之に入れ込んでしまう気持ちも理解できる。
しかし泰之も彼女自身に甘え過ぎる。
結果的に間違いなく真知子の過剰な負担になっているのだ。

支えることが愛情表現だった真知子。
しかし彼女もそんなに強くは無いのだ。


彼と距離を置いて、休息を入れなければならない時期だと思う。
しかし心も弱っている今の彼女に、冷静な判断は望めないだろう。



「ところで、最近は忙しすぎてやってないでしょ?」
 「え、何を?」

「Hだよ、H!」


煮詰まった時間を壊すべく、俺は昼間ながら話題を転換した。

真知子はこういう話題は嫌いじゃなかったはず。
一種の賭けだ。


 「もう、いきなりなんだから(笑)・・・彼が居ますからね」
「しているんだ?」



重苦しい話題が続いた中、真知子の声色がふと緩んだ。
何とか風穴を開けることが出来たようだ。


 「だって、求めてくるから・・・」
「そりゃご苦労様(笑)・・・無視してゆっくり寝れば良いのに」

 「彼、若いから・・・体力は有り余っているんだよね」
「いいなぁ、羨ましいなぁ、発散できるんだから(笑)」

 「でもね、平良君には敵わないよ・・・」
「何?どういう事よ」

 「もう、言わせないでよ(笑)・・・いっぱい感じさせてくれるから」
「感じる?いいねぇ・・・今からやっちゃおうか(笑)」

 「ダメよ、隣りで寝ているんだから」
「ご両親は?」

 「今は病院に行ってて、娘も保育所・・・」
「じゃ、できるね(笑)・・・彼の目の前でやっちゃおうか?」

 「・・・ダメだったらぁ(笑)・・・思い出しちゃうでしょ」
「いいよ、思い出してご覧よ・・・俺も真知子を抱き締めたいから」


不思議な事に、真知子はすんなりとテレフォンSexに乗って来た。
条件反射的に、脳裏に快楽が呼び起こされている。
すでに真知子の心に刻み込まれたようだ。

熱い吐息、滲み出す喘ぎ声・・・芝居とは思えない熱を帯びている。


「下着の中に指を入れてみるよ・・・なぜ濡れているんだろうね」
 「だって、平良君がHな事いっぱい言ってくるからだよ・・・」

「真知子が感じるから言ってみたんだよ。もう、まだ昼間なのに」
 「・・・感じちゃう・・・何故なんだろう・・・」

「真知子の中に指を差し入れちゃうよ・・・ほら」
 「あ、ダメェ・・・見えちゃうからぁ・・・」

「その指を、真知子の感じる所に当てるようにピストンして」
 「・・・・ダメェ、声が漏れちゃうから・・・・恥ずかしい」

「俺の指が真知子の濡れてる部分をもっと強く突くからね・・・」
 「あ、ああ、あ・・・欲しくなっちゃうからダメエェェ!」



受話器の向こうでガタンと音がした。
扉を開ける音だ。

一瞬の間の後、真知子が信じられない言葉を口にした。


 「あ、ヤス君・・・」



<以下次号>








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