今日も 何ごとも無く 予定通りに 老人施設訪問です
痴呆棟に行って下さいとのこと 先週に引き続いて 2度目です 先週のあの方・・・・ 女性の方は・・・ いらした!いらした!・・・・ お部屋のベットに横になっていらっしゃいます 7つ道具の折り紙をもぞもぞと出しながら 話しかけていきます
まずは ゛やっこさん ゛ 「まぁ 昔はよく折ったのよ」 と とてもいい笑顔です よかった!お元気そうです
「あれは私のだんなさま」 そう指差す先へ目をやると セピア色の古い写真が 額に入れて飾ってあります 「ご主人ですか」 とてもりりしく整ったお顔立ちです 「お嫁にいって半年で兵隊にいったの」 そうか・・・・戦争中ですものね その後 貿易の仕事を始めたけれど 再び戦争へ お2人をつなげるものは 手紙のやり取りだったそうです
・・・・恋文かしら・・
そんなことを考えていたら 「封書は駄目なのね ぜんぶ 葉書なの・・・・ 弱気な事だの 心配事だの書くとねぇ ぜぇんぶ棒線で消してあってね・・・ 好いたの好かないのどころか 冗談1つでも 真っ黒黒になってたものよ」 えええええええ・・・・ なんとも 心寂しい話しです 結婚したばかりだというのに 兵隊に取られ 連絡といえば おおぜいの人の目に触れた葉書・・・
結婚してから3年 子宝に恵まれず 当時は 妊娠しないと家を出されてしまうところ ご主人の出征する前にお腹に命が宿ったそうです 「なかなかさずからなくてねぇ・・・できたときは 心配してた事に腹立つやら うれしいやらで 泣いちゃったよぅ」 今でこそ 情報が手に入るので 不妊の知識も得る事ができますが 当時は ただただ理由もわからず 不安を抱えて 過ごしていた事でしょう・・・・
息子さんが3歳になるまで ご主人は1度も会えかったそうです 我子といえども 突然3歳の息子を前にしたとき 「本当に私の子だろうか」 と 疑われたとおっしゃっていました 「そのときのなさけかったことったらないよぅ」 と教えてくださいました
お話しは はずんで お弁当には腹持ちのいい「ご飯」を たっぷり入れること 梅干は1つでいい事 頭が痛いときは 梅干をちぎって こめかみに貼り付ける事 などなど・・・いろいろ教えていただきました
「そろそろ郵便屋さんが来るころだよね どうしただろう・・・預けておいたお金・・・」 突然気にされます 出征していたご主人の軍人恩給をどうしてしまったのかを 尋ねられました
「あぁ・・・郵便屋さんなら ちゃんとお金を届けてくれて 大切な物と一緒にしまってありますから 大丈夫ですよ」
「おお・・・そうかい 助かるよぅ」
嬉しそうに納得されます
誰が訪れても 「よく来たねぇ」 と笑顔で手を差し出すこの女性・・・ 今、これほど穏やかに過ごされているのは 今までの生活が精神的にも物質的にも 満たされていたことの表れではないでしょうか
心を穏やかに老いていく 誰もがそう望み 思い通りにいかないもの 今をどう生きれば そういう日々が 与えられるのでしょう・・・
想い出
美しい想い出
楽しい想い出
幸せな想い出
暖かな想い出
穏やかな想い出
住みなれた地を離れ
体の自由を奪われ
私の生きる力は
・・・・想い出だけ
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