橋本裕の日記
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歩いていると、ときどき素敵な笑顔のお年寄りに出会うことがある。そういう女性のお年寄りに出会うと、なんとなく心がときめく。若い女性以上に魅力的に思える。もちろん、そうしたお年よりはほんの例外なのだが、それだけに、感動も大きい。
旅先でそんなお年寄りを見かけたことがある。美人と言うわけではない。ただ、その全体からかもし出されるやわらかな雰囲気がいい。そのときはこっそり後をつけて、お宅の前まで行った。ごく普通の、ひなびた民家だった。おそらく平凡な人生を、平凡に生きてこられた人なのだろう。
年をとると、多くの人は人相が悪くなる。それは肉体が衰えるにつれて、心の貧寒さが表に表れてくるからだ。しかし本人にそうした自覚はない。だから慎みを忘れ、殺伐とした内面をさらしながら、平気で道を歩いている。これはとても悲しいことだ。
そうしたなかで、春の陽だまりのような老人の笑顔に会うとうれしくなる。それが老女であればなおさらだ。若い女性にはない、そこはかとない滋味が感じられる。その優しさにふれているうちに、人生の疲れが癒され、心の垢がながされていく。そして思わず、生き仏かと拝みたくなる。 (今日の一首)
旅先で出会う老女のほほえみに 心の垢もながされていく
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